現在、「年金支給年齢が65歳、更には70歳になるのではないか」、そのような時代が到来しており看護師も例外ではありません。
また、
- 「病院等を定年したけど再就職は可能なのか?」
- 「60代の看護師転職って本当に可能なのか?」
という疑問が出てくる看護師の方も多いのではないでしょうか。
まず、結論からお伝えすると、60代看護師として、正職員での転職は可能といえます。(もちろん、パートや嘱託社員なども豊富です。)
今まで看護師として働く場合は、「60歳定年制」をとる医療施設が今まで一般的でした。
しかし、ご存知のように急速に進む少子化・高齢化対策の一環として、高齢者雇用安定法(厚生労働省)が改正され、65歳からの年金支給開始に対応すべく、労働者を雇用する側は、65歳までの雇用を確保する措置を求められること進められました。
そのため、慢性的な人手不足である医療福祉施設の多くは、看護師の定年を65歳に引き上げた施設もあり、看護師本人の働きたいという希望に応じた「継続雇用制」を導入した施設もあり、それに伴い求人情報に「シルバー人材、60代看護師歓迎」という文字が看護師転職サイトに見かけることも多くなりました。
さらに「看護師に不足感がある病院は75.7%も存在する」ことが判明しています。

(日本看護協会:病院看護実態調査より)
日本看護協会の調べによると、「看護師に不足感がある」と答えた3,549病院のうち75.7%にも及び、看護師は慢性的な人手不足であり、看護師の年齢を問わず需要が高くなっていることが昨今でも分かります。
以上のことより、職場を選ばなければ正職員や嘱託社員、パートなどの60代看護師転職は可能といえます。
ただ、60代の看護師転職でも「良い職場環境や働く雇用形態を自分で選びたい」というのが本音ではないでしょうか。
このページでは、60代看護師に転職がお勧めの職場と、転職するための注意点を説明していきます。
目次

1.転職がお勧めの職場

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看護師は、仕事内容がハードなことや雇用側の考えで長く働いて欲し希望があるため、若い人材を採用に優先される場合が多く、実際に60代の看護師が働く場所はかなり限られてしまうことが現状です。
しかし、60代の看護師は経験値が高く、雇用する側にとっても指導する内容が少なく、即戦力として働いてもらえるというメリットもあり、雇用側が60代の看護師を勤務してほしいと思いやすいお勧めの職場を説明していきます。
(1)慢性期病院・療養型病院

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リハビリを中心とした慢性期病院は、患者とのコミュニケーションが大切にされ、同じ年代で働く看護師がいることは、患者の「自分も負けられない」というやる気を引き出すことにもつながります。
相談できるお母さん的な立場をとることができる60代看護師の役割が、慢性期病院では役に立ち、雇用側も理解しているケースが多いと言えます。
(2)精神科病院(又は精神科病棟)

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精神科の看護師は医療処置よりも、コミュニケーション能力が求められ、看護師自身の精神的安定も必要になります。
精神科で働く若い世代の看護師は、自分の生活に追われ、精神的に不安定になりがちであり、不安定さが患者に投影されてしまうことがあります。
そのため、精神科病院は60代の看護師の活躍が期待される職場であり、医療処置が少ない分だけ、看護師自身も安心して勤務できる職場になります。
(3)高齢者向けの施設(特養やデイサービスなど)

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高齢者向けの施設も、医療処置が少なく、長期にわたる患者との関係性が必要になる職場です。
例えば、
- 特別養護老人ホーム
- 有料老人ホーム
- 介護老人保健施設
- デイサービス
などです。
また、60代看護師の多くが自分の親の介護などを経験し、特別養護老人ホーム(特養)やデイサービスに入所させた経験を持っています。だからこそ、患者の立場も、家族の立場も理解することができます。
医療者でありつつ、介護経験がある60代看護師は、「やってもらってよかったこと」「やって欲しかったこと」が経験値として理解している場合が多いと言えます。
そのような視点を持った60代看護師が、高齢者向け施設で勤めることは、ケアの向上や家族支援に役立つことになります。
(4)訪問看護ステーション

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訪問看護ステーションは開設数と反比例し、慢性的な看護師の人手不足の状態です。
60代看護師は、それまでの看護経験も、人生経験も豊富です。
だからこそ、自宅で介護するご家族の相談に乗ることも上手ですし、自宅のものを利用して手早く介護する方法も、若い世代よりも引き出しを多くもっています。
そのため、長年の臨床経験や訪問看護の経験がある60代看護師であれば、即戦力になるため重宝されます。
また、経験がなかったとしても、患者さんにあったケアをじっくりと提供したい気持ちがあれば、訪問看護の世界は60代看護師の能力を活かせる職場になります。さらに、オンコールにも対応できれば60代であっても、正社員として勤務する可能性が広がるでしょう。
(5)嘱託の指導者や管理職

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60代看護師で、他の病院で管理者として勤務したことがある経験があれば、管理者や嘱託の指導者として転職することも可能です。
特に、訪問看護ステーションを経験し、看護管理者研修を修了した方などは、訪問看護ステーションの管理者として働くことも可能です。
60代で、健康であり管理者としての役割が担えるのであれば、その能力を活かせる場所はあります。
(6)クリニック

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慢性期を中心としたクリニックや、在宅診療クリニック、医師が高齢のクリニック、短時間でパート勤務を募集しているクリニックは、60代看護師でも十分の勤務することができます。
逆に、育児などで急な休みを取らない60代看護師は、重宝される大切なスタッフになります。
しかし、60代の看護師を、正社員として勤務させるクリニックは少なく、「正社員で働きたい」「高収入が欲しい」といった大きな期待がなければ、60代看護師でもクリニック看護師になることができます。
また、内視鏡検査や健診を中心としたクリニックでは、てきぱき働く若い年代の看護師を求める傾向があり、注意が必要です。
2.60代看護師の転職注意点

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60代の看護師に転職で注意しておきたい点としては、「自分の体調に合わせた働き方をする」ことです。
年齢が上になればなるほど、個人差が大きくなり、若い時の自分の幻影に惑わされることなく、その先にある楽しい老後のための働き方が大切になります。
60代の看護師転職で注意しておきたいことを説明していきます。
(1)仕事への「やりがい」を見極めること
特に定年退職した看護師の方は、再就職や転職する理由は何でしょうか。
様々な理由がありますが、一番働く中で大切なことは「自分がやりがいを感じる職場で働き続けること」です。
60代の看護師転職では「看護師資格がなくても出来る仕事」「私じゃなくても出来る仕事」に抵抗がある方が多く、仕事内容へ一番目を向けながら、転職先を探しましょう。
(2)夜勤の場合、自分の体力と相談すること
60代でも精神科病院や高齢者施設などで、「高収入」「夜勤あり」の求人を見つけることがあります。
しかし、夜勤ありの求人を選ぶ場合には、
- 休憩がきちんととれる体制があるか
- 夜間の医療処置がどの程度必要なのか
- 夜勤明け後の勤務はどうなのか
などを確認してから転職することが大切です。
高齢者施設などでも人工呼吸器やがん末期などの患者を受け入れている場合もあり、人数の少ない夜勤帯でも医療処置を必要とする患者が多い施設もあるため注意しましょう。
(3)給料よりも福利厚生などの詳細内容を確認すること
現段階では60代看護師の転職は、「正職員」ではなく「非常勤・嘱託社員」での募集が多いことが現状です。
このように、正社員にこだわらず、働くことで得られる福利厚生に目を向けて、転職を考えてみるのも重要なポイントになります。
(4)新人の気持ちで勤務することを忘れない
60代看護師の場合、「自分の看護技術は若い看護師よりも上手だ」「経験は私の方が上」という気持ちが強いと、転職後の人間関係がうまく行かなくなることがあります。
看護経験や年齢的には、その職場で一番上であっても、その職場では新人看護師です。
職場に慣れるまでは、自分の経験や意見を押し付けないこと、それも60代看護師が転職する時の注意点になります。
(5)複数の選択肢から求人を選ぶこと

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60代の看護師が求人を探す前に、
- 自分の市場価値を知ること
- 60代での転職先を複数知ること
などが大切であり、複数の選択肢の中から比較しながら転職先を選定することが重要です。
60代の看護師が、転職先の看護師求人を探すための方法は4つあり、
- ハローワーク
- 看護師転職サイト
- ナースセンター(日本看護協会)
- 友人・知人に紹介
などの方法があります。
お勧めとしては、ハローワークと看護師転職サイトの2つを利用して60代の看護師求人を探しましょう。
理由としては、
- ハローワークでは、嘱託社員の求人が多く出る点
- 看護師転職サイトでは、嘱託社員・パート・正職員と幅広く探してもらえる点
などの理由です。
人気の看護師転職サイトは「看護師転職サイト口コミランキング」を確認しておきましょう。
3.最後に
超高齢者社会と少子化の流れを受け、60歳定年制が無くなり、60代看護師の需要が拡大し、介護や看護の豊富な経験を活かし、慢性期や精神科病棟、高齢者施設、訪問看護ステーション、看護管理者などでで、60代看護師の募集が多くあります。
しかし、一般的に60代看護師の転職求人は少なく、「求人がなくて当たり前だ」という気持ちで探すことも大切です。
相手の募集要件に流されず、そして看護経験のプライドにこだわることなく、自分のワークライフバランスと体調に合わせて、無理のない転職先を見つけてみてください。
60代になっても看護師を続けることの意味は、転職できた職場の中でいくらでも見つけることができるはずです。
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