キャリアアップを目指す看護師たちが、まず目指す役職ポストが「主任看護師」です。
主任看護師は、スタッフナース(一般看護師)の直属の上司にあたる役職であり、スタッフにとって実践モデルでもある中間管理職(プレイングマネージャー)です。
そのため、主任看護師は30歳から40歳代の看護師が多いと言えます。
ここでは、主任看護師の役割や仕事内容、平均年収などについて私の体験談を含めながら説明していきます。役職へのキャリアアップを目指している看護師はぜひ参考にしてみてください。
目次

主任看護師の役割とは?

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看護主任の役割を一言でお伝えすると、看護師長が定めた部署目標に沿って各患者の看護目標を達成できるよう実践モデルとなってスタッフを教育していくことです。
基本的に、どの病院でも看護部のトップに立ち、看護部全体の理念や方向性を定めるのが看護部長です。
看護師のキャリアとして主なものを挙げると、
- 看護部長(総看護師長)
- 看護師長
- 主任看護師
- スタッフナース(一般看護師)
となります。
看護部長の下に位置づく「看護師長」は各部署を束ね、その部署が看護理念を実践として体現できるように目標を定め、スタッフが働きやすい環境を整えます。
そして、看護師長の下に位置するのが「主任看護師」です。
私の体験から主任看護師の主な役割について、説明していきます。
看護スタッフの目標管理
主任看護師は部署目標を達成するために、各スタッフの目標達成を支援する役割があります。
例えば、ある研修を受けているスタッフが、
- その研修を修了できるように
- プリセプターを務めるスタッフが1年間やり遂げられるように
- 患者実践や部署における係活動が円滑に進むように
など、そのことに対して助言などを行います。
教育・人材のマネジメント

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看護の現場における人のマネジメントとは「スタッフナースの指導・相談」のことです。
- 「直接指導して、スキルアップを図ること」
- 「患者に適切で十分なケアが行われているかを確認し、必要に応じて指導すること」
などで、スタッフナースのスキルアップを図ります。
また、スタッフナースが、社会人としての態度や、看護師としての専門的知識・技術を身につけ、日々成長していけるよう、主任看護師が働きかけます。
スタッフナース一人ひとりが医療機関に所属する、組織人としての在り方を身につけるためのサポートも主任看護師の役割の一つです。
実践を通じたスタッフ教育
実践を通じたスタッフ教育も、主任看護師の重要な役割です。
患者の中には複雑な社会背景をもった人や、厳しい状況に置かれて心理的に消耗した状態の人もいるでしょう。
そのような困難事例に対し、育ちつつある中堅層のスタッフナースに担当を任命するなどを行い、患者のケアには主任看護師が責任を負いつつ、ケアを通してスタッフナースが成長できるように自身の実践を支えて成長を促します。
業務マネジメント

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看護の現場における業務のマネジメントは、
- 「包括的な看護業務の把握・運営」
- 「職場環境の改善・向上」
の二つになります。
包括的な看護業務の把握・運営とは、主任看護師として師長の考えをスタッフに伝え、実践していくことです。
また、スタッフナースの身近な存在として、現場で働くスタッフの思いを汲み取り、師長に伝えることも大切な役割です。
職場環境の改善・向上
主任看護師は、スタッフナースにとって仕事が行いやすく、達成感を持てるような環境づくりを行い、業務を円滑に遂行できるよう、職場環境の改善・向上を図る役割があります。
また、患者の安心・安全・安楽のための環境整備を調整し、統括することも主任看護師の役割です。
主任看護師の主な仕事内容(例)

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スタッフナース(一般看護師)と共に働くことの多い主任看護師は、どのような仕事内容をこなしていくのでしょうか。
ここでは、主任看護師の主な仕事例を紹介していきます。
所属部署のスタッフのサポートと教育

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患者の看護目標を達成できるようにする事と同時に、ケアにあたるスタッフが働きやすいように業務のサポートをします。
具体的には、前日までにその日の受け持ちスタッフを決定しますが、当日の患者やスタッフの状況を見ながら、主任自身がスタッフの業務のサポートに入ったり、受け持ち患者や業務分担の変更をスタッフに指示したりします。
また、スタッフ一人一人の働きを確認し、新人看護師、プリセプター、チームリーダーなどに対し現場での教育を行ったり情報共有をしたりして、各スタッフの教育にあたります。
スタッフナースのケアも仕事の一つ
命に関わる現場ということもあり、スタッフナースは、日々緊張感の中で業務を行なっており、経験年数や立場によって、様々な悩みやストレスを抱えています。
主任看護師は、一人ひとりのスタッフナースと信頼関係を作り、それぞれの不安やストレスなどの負の気持ちを汲み取ることで、スタッフナースが前向きに仕事に取り組めるよう働きかけます。
ヒヤリハットやインシデントが起こった際には、単に指摘するのではなく、何が原因だったのか、再発させないために何をすればよいのかなどを、スタッフナース自身に気づかせ、自身の力で改善できるよう促すことが大切です。
看護業務の管理・指導

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主任看護師になると、夜勤の回数が減り、平日は日勤となりリーダー業務を行う事が多くなる病院がほとんどです。
リーダー業務を通して、患者に適切な医療がなされるようにし、患者の看護目標が達成できるように、医師からの指示受けや看護スタッフへの指示を行うことが仕事になります。
また、各スタッフが働きやすいように、通常業務を通して気づいた課題や問題点に対しては業務改善を行っていきます。
他部門・他職種との連絡調整も大切な仕事
主任看護師は、現場を仕切る調整役を行う場合が多いといえます。
スタッフナースや患者全体の状況を把握だけではなく、他部門・他職種との連絡調整や、交渉も大切な仕事の一つであり、臨機応変に対応することが必要です。
スケジュール管理や看護師長の補佐

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看護師長の不在の場合は、主任看護師がその業務を代行する事になります。
シフト作成は看護師長が行っている組織が多いと思いますが、中には主任看護師が作成したり、作成に関わったりしている組織もあります。
また、看護師長が行うベッドコントロールに対し、患者情報を共有し、より患者や家族の状況に即した療養環境を提供できるよう、看護師長を補佐します。
看護師の体験談
看護師長ももちろん患者とスタッフそれぞれの状況を理解していますが、主任看護師は、よりタイムリーに詳細な患者の状況を把握していますし、現場で働く側のスタッフの思いもスタッフに近い立場で把握しています。
看護師長はどうしても目標や理想を掲げなければならない側面もありますが、実際に働く立場としては理想通りにいかない事もあります。
そのような場面でスタッフナースが看護師長に思った事を表現できるとは限りません。
主任看護師は、現場にいる者としての思いを看護師長に伝え、スタッフと看護師長のコミュニケーションが図れるように努めます。
体験談:私が感じた仕事でのやりがい

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主任看護師ならではの仕事での「やりがい」は、部下となるスタッフ看護師の成長を、自分の喜びとして感じられることです。
スタッフナース一人ひとりの個人目標やキャリアアップに対しての具体的な支援を行うことによって、成長の手伝いができることは、この上ない私の喜びでした。
スタッフナースが、
- 自身の力で壁を乗り越えられた時
- いきいきと前向きに働いている姿を見た時
など、嬉しさと達成感で胸がいっぱいになることを今でも覚えています。
また、病棟運営に参加することで、看護師管理職としての自分の目標が明確になり、それが看護師としての私の「やりがい」につながりました。
主任看護師としてのプレッシャーや負担はもちろんありましたが、その分「やりがい」のある役割だと感じています。
主任看護師に対して研修を行っている病院も多い
主任看護師は管理職の第一歩という事で、就任初年度には研修を課している病院が多く、私が勤務していた病院もありました。
1年間かけてコース形式で研修を受け、内容としてはサービスや看護管理、病院経営、人材育成の基礎に関する講義が多く、実践形式では所属部署の看護管理上の問題に管理者として取り組む演習を行いました。
主任看護師の平均給料・年収

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一般看護師の年収が5,325,324円に対して、主任看護師の平均年収は6,483,444円です。
また、主任看護師の平均年齢は45.5歳です。
年収で見ると、約100万円近くの差がありますが、月々の給料で見ると以下の通りです。
主任看護師の平均給料(月収)
35歳~39歳 | 379,778円(普通の看護師平均:341,950円) |
40歳~44歳 | 421,706円(普通の看護師平均:350,300円) |
45歳~49歳 | 446,781円(普通の看護師平均:362,250円) |
50歳~54歳 | 460,663円(普通の看護師平均:374,800円) |
55歳~59歳 | 440,176円(普通の看護師平均:データなし) |
病院の規模や年齢によっても変わりますが、毎月の給料でいうと、数万円から5万円程度の給料がアップする計算になります。
看護師の月収の特徴として、基本給は看護主任で上がるものの、手当自体はさほど一般の看護師と変わりません。
主任看護師とスタッフナースの月の給料(平均月収)の差額

一般看護師と主任看護師の年齢別の差額は上記の通りです。
30代後半で看護主任になった場合と一般のスタッフの差は、月22,540円しか変わらないのが現状です。
大幅な給与アップは期待できない可能性もある

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主任看護師の場合、看護師長や看護部長と違い夜勤も行う中間管理職です。
スタッフナースの時と比較するとその回数は減る傾向にあるようですが、そのため毎月の給料が少なくなった、または、主任看護師になっても「給与額に変化がない」と感じる方が多いようです。
そのため、中間管理職を嫌がる看護師も近年増えている傾向にあることは確かです。
主任看護師になるにはどうしたら良い?

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先にも述べた通り、病院の規模や地域によって多少の差はありますが、早くても看護師経験5年以上、おおむね8年から10年ほどの経験をしてから主任に任命される人が多いです。
看護師長や看護部長から任命される
中堅層のスタッフに対し任命するという形で主任となる場合が多いです。
経営母体が大きい、企業が経営している組織などは、主任への昇格試験に合格する事が第一条件となっていて、その合格者の中から適宜任命するというところもあります。
その他に、最近はキャリアラダー制度を設けている組織も多いため、例えばキャリアラダーⅠやⅡをクリアしている事が主任に任命される最低条件としている組織もあります。
病院によってはキャリアアップが難しいところがある
看護師の場合、病院によっては、なかなかキャリアアップのチャンスが与えられない(キャリアが長い看護師が多く在籍する)、または、昇格制度がもともとない病院などもあります。
自分の働く病院に、キャリアアップの可能性がないなら、転職をして、主任看護師として働くこともおすすめです。
転職をきっかけに主任看護師になる場合もある

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主任看護師については、長く同じ病院で働くことで得られる地位ということでもなく、転職を機に、主任看護師として勤務する場合も少なくないようです。
主任看護師の場合は、現場の看護業務をこなしながら、役職としての職務も果たします。
そのため、看護業務が滞り無くでき、現場をまとめられる人であれば、転職の際に役職が与えられる場合もあります。
看護師専門求人サイトやエージェントを活用しよう
転職をして主任看護師を目指す場合、一般の求人サイトなどを見ていてもなかなか良い求人に出会えません。
少なくとも、看護師専門の求人サイトで検索するか、転職エージェントに登録するなどして、担当のコンサルタントに相談しながら主任看護師として働ける求人票を探すと良いでしょう。
キャリアの夢を捨てきれないという方は、まずは主任看護師になることが第一歩になります。転職をして、キャリアアップに挑戦してみてはいかがでしょうか。
最後に
主任看護師はキャリアアップへの第一歩です。
現場での実践における責任者、スタッフの教育、看護師長とスタッフの橋渡し、看護師長代行補佐、など主任看護師の仕事は多岐にわたります。

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大変な役職ではありますが、年収のアップも見込めますし、患者と直接的に関わりを持ちながら、管理職者としての働きも行える主任職は非常にやりがいのあるポジションであると言えます。
通常、主任看護師になるためには、直属の上司である師長や看護部長から推薦・任命されて役職につくケースがほとんどです。
そのため、もし今後キャリアを目指していきたいと考えているのであれば、それとなく師長にその旨を伝えておきましょう。そしてもちろん、日々の業務に邁進することも忘れないでください。それが主任看護師への一番の近道となります。
また、主任看護師は看護師にとってキャリアの一つに過ぎません。
「いくつも選択肢のあるキャリアアップの道の中から、看護師として自分自身が今後どのようになりたいのかをしっかりと考えたうえで目指していただけたら」と感じます。
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