ご存知のように看護師にも一般企業と同様に、さまざまな役職があり、一般企業と看護師との役職を比べると以下の通りです。
スタッフ看護師(スタッフナース) | 平社員、役職につかない看護師 |
主任看護師(副師長) | 企業で例えれば「係長」の役職 |
看護師長 | 企業で例えれば「課長・部長」の役職 |
看護部長 | 企業で例えれば「部長・本部長・役員」の役職 |
しかし、看護師は一般企業とは違い、
- 女性が中心の社会
- 気が強いスタッフが多い傾向にある
- 仕事自体がハードで責任が重い
- 慢性的な人手不足が背景にある
などの理由により、それぞれの役職には看護師特有の困難や苦労がつきまといます。一方で、だからこそ看護師の仕事に「やりがい」があると感じる人もいるでしょう。
「あなた自身は管理職を目指しているタイプですか?それともスタッフ看護師として現状を維持するタイプでしょうか?」
もし迷っているなら、この機会に、あなた自身に向いている役職と将来について考えてみましょう。

スタッフ看護師(スタッフナース)

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スタッフ看護師は、特定の役職につかず一般的な看護業務を行う看護師であり、新人当初は全員が「スタッフ看護師(スタッフナース)」ですが、年齢を重ねるにつれ役職につくかどうかを打診される場合があります。
この場合「スタッフ看護師」を続けたいなら、これを断らなければなりませんが病院によっては難しいケースもあり、中には管理職になることを断った後、他の病院に転職して「スタッフ看護師」を続ける方もいます。
このような看護師は強い意志を持って「スタッフ看護師」を続けていると言えます。
年齢を重ねてもスタッフ看護師を続けるメリット
では年齢を重ねても「スタッフ看護師」を続けることのメリットとは何なのでしょうか。
例えば一般的なメリットとして、
- 管理職と比べ仕事が気楽であること
- 管理職特有のストレスがないこと
- 仕事が多忙になりにくいこと
- 現場で働くやりがいを感じることが出来ること
などが挙げられます。
もちろん看護師としての責任は必要ですが、極端に言えば自分自身の仕事さえしっかり行っておけば、それ以上の責任を追及されることはありません。人間関係においても一般的な人間関係のストレスはあるでしょうが、上層部とスタッフの板挟みになるなどの管理職特有のストレスは抱えなくて済みます。
管理職ならではの多忙な仕事に携わる必要もなく、なにより現場で直接患者に関わることにやりがいを感じる看護師にとっては「スタッフ看護師」として働いた方が、明らかにメリットが多いと言えます。
管理職になった場合、管理の仕事が優先されるため、現場で直接患者の看護をする機会が少なくなってしまうからです。
スタッフ看護師であり続けるデメリットとは?
では、逆にデメリットとは何なのでしょうか。
- 給料がアップしにくいこと、アップしないこと
- 世間の評価が低いこと
やはり役職に就けば給料もアップしますので、管理職となった同期の高額な給料を「うらやましい」と感じてしまうこともあるでしょう。
また、役職に就けば当然、世間の評価も高くなります。
出世していく同期の看護師に対して自分だけが後れをとったような気持ちになることもあるかもしれません。
スタッフ看護師を続けることに向いている方とは?
このようなことから総合的に考えると「スタッフ看護師」を続けることに向いている看護師とは、
- 現場での直接患者に関わる看護の仕事が好き
- 「気楽さ」「自由」が最優先事項である
- 人の上に立ったり、まとめたりすることが苦手
- 世間の評価はあまり気にならない
などの条件を備えた看護師であると言えます。
スタッフ看護師で居続けることで、患者ケアに集中でき、臨床のエキスパートとして定年後も臨床勤務を継続できるなどが醍醐味ではないでしょうか。
主任看護師(副師長)

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主任看護師(又は副師長と呼ばれる場合もある)は、一般職で言えば「係長」の役職にあたります。
勤務する病院によって様々ですが、看護師を10年以上続けていると任されるようになることが多いようです。
経験が長くなったので指名され、断り切れずなんとなく役職に就いたなどという「成り行きタイプ」もいれば、近い将来は看護師長、ゆくゆくは看護部長を目指しているため、その第一歩としてまずは主任看護師になったという「着実前進タイプ」も存在します。
仕事内容は看護師長の補佐的な仕事を行いながら「スタッフ看護師」が行う看護業務にも携わるのが一般的です。
主任看護師の仕事の行いやすさは上司の看護師長に左右される
主任看護師の仕事が行いやすいかどうかを大きく左右するのは、直属の上司である「看護師長」の力量と相性だと言えるでしょう。
例えば、看護師長が自分の仕事と主任看護師の仕事の境界線をあいまいにしてしまうようなタイプの場合、本来は師長の仕事である分を行わなければならなくなり大変な思いをすることがあります。
また、人間にはどうしても相性の合わない人というのが存在するものです。
上層部とスタッフ看護師の板挟みになりやすい役職
上層部と「スタッフ看護師」の板挟みとなりやすいのもこの主任看護師の役職です。
自分自身も現場に携わっており、「現場の辛さもわかるが、上層部の意見に逆らうこともできない」というジレンマに陥ることも多いでしょう。
また、役職がついていても年齢的に若い看護師が多いため、自分より年配の看護師に意見することにストレスを感じるケースもあるようです。
主任看護師ゆえの喜びもある
このようにハードな仕事である「主任看護師」ですが、現場に最も近い主任という役職ゆえの喜びもあります。
「スタッフ看護師」たちから慕われたり相談を持ち掛けられたりした時や、「看護師長」に頼られ仕事の成果を認められた時などは、主任看護師として強いやりがいを感じる瞬間でしょう。
主任看護師(副師長)に向いている方とは?
これらのことから総合的に考えると、主任看護師に向いている看護師の条件は、
- 視野が広く総合的な判断ができる
- 観察力がある
- 「看護師長」「スタッフ看護師」の両方とうまくやっていける対人能力がある
- 精神的にタフである
- ある程度の鈍感力がある
- ストレスに強い
などが挙げられるでしょう。
もちろん看護師としての能力も必要ですが、一番大事なのは精神的にも体力的にも大変である「主任看護師」という役職を乗り切る強さです。
この点では強い信念をもってこの役職に臨むであろう「着実前進タイプ」の主任看護師が有利であるように感じます。
看護師長

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「看護師長」の役職に就く看護師は「主任看護師」より一層上昇志向のあるタイプの看護師が多いと言えます。
もちろん中には働いている部署の看護師長のポストに空きができ、やむを得ず抜擢された「成り行きタイプ」も居ないわけではありませんが、数は少ないと言えるでしょう。
一般職で言えば「課長や部長」に当たるポストであり、看護部長や院長と現場とのパイプ役としての役割が要求されます。
看護師長は困難!15年間以上は実績が必要?
看護師経験は少なくとも10年~15年以上は必要であり、現場の看護師を育てたり、目標達成のための管理業務を行ったり、医療事故の予防をしたりするのが主な仕事になります。
患者や家族からのクレーム対応に追われたり、シフト作成でのスタッフからの不満に対応したりすることで、ストレスをため込んでしまう看護師も多いかもしれません。
また突然、部署移動を命じられ、慣れない場所でいきなり看護師長としての役割を求められ、困惑するケースもあるようです。
目標を達成したときの喜びがある
このように困難や苦労も多い「看護師長」という役職ではありますが、その分、自身の働きかけによって「スタッフ看護師」や「主任看護師」と一丸となり、大きな目標を達成した際の喜びは格別であるとも言えます。
自分の人生での生きがいや、仕事のやりがいなどを求めて看護師長を行う方も多い傾向にあると言えます。
看護師長に向いている方とは?
そんな「看護師長」に向いている看護師の条件としては、
- 危機管理能力が優れている
- クレーム対応の能力に長けている
- 決断力、判断力がある
- 上層部とうまくやっていける能力がある
- しっかりとした信念がありブレない
- ストレスに強い
- 人の上に立つこと、リーダーシップを発揮することに喜びを感じる
などが挙げられます。
人の上に立つ人間として「優しさ」も重要な要素ではありますが、「看護師長」の場合、「あの師長さんって優しいよね」と言われる人よりは、「ちょっときびしいよね」「怖いよね」と言われる人の看護師が結果的にはうまく担当部署をまとめられるように思います。
そういった意味では「しっかりとした信念がありブレない」という要素は特に重要だと言えるかもしれません。
看護部長

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看護師のトップであり、病院の経営などにも関わることがある存在です。
病院に1人の存在であり、大病院においては、この地位に昇りつめるのは非常に困難であると言えるでしょう。
この役職をめざす看護師には多くのものが求められます。
病院等における看護師キャリアの頂点
通常、一般企業では、部長の上には専務などがいますが、看護部長の場合は、上司が副院長や院長になるため、看護師のキャリアでも頂点の役職と言っていいでしょう。
看護師として病院等に勤務しキャリアアップを目指す際には、この看護部長をゴールの目標にすることになります。
また、病院によっては、看護部長のより副院長の役職が低くなる場合もあるようです。
仕事内容は多忙を極める
看護部長の仕事内容は、看護部の理念や目標の周知、病院の経営や運営への参画、看護部の人事や労務の管理、看護業務改善などが主な仕事になり、具体的には、
- 病院長や副院長との会議、折衝
- 看護部の業務計画書作成
- 看護師の採用計画の作成
- 看護師の教育方針や教育計画の作成
- 看護師長などへの、計画の周知、指示
- 体外的な交渉
なども一般的に仕事となります。(勤務する病院によっては異なります。)
看護部長に向いている方とは?
- マネージメント能力に長けている
- 人を動かす力がある
- 人脈や交渉能力がある
- ゆるぎない信念がある
- 向上心がある
- 問題解決の能力が優れている
看護師部長は多くの仕事を抱えているため、任せるべきことは人に任せ効率的に仕事を行う必要があります。
また、それを可能にする人材を育てることや信頼関係を築くことも重要であり、他部門や院長との理想的な連携をとるための交渉能力も欠かせません。
転職先の面接で役職の希望を伝えるのはアリ?

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看護師として転職する場合、役職の希望を伝えることは「アリ」なのでしょうか。以下で管理職の転職事情について触れていきます。
管理職枠で募集されている求人を選ぶこと
管理職としての転職を希望するのなら、初めから管理職枠で募集されている求人を選ぶのが良いでしょう。
ただし条件が指定されていることが多いため(例えば、病棟での主任経験5年以上など)注意が必要です。
管理職の求人は非公開求人が多い
例えば、あなたが勤めていた病院で、主任看護師になる年齢や経験があった場合に自分の病院求人を調べると、管理職で募集しているのを見ていたらどう思うでしょうか。
一部の看護師はやる気をなくす可能性があります。
そのため、管理職の求人は非公開の求人となっており、看護師専用の転職サイト(エージェント)に依頼する必要があります。
一般的な求人の場合、役職希望は伝えない方が無難
一般的な求人の場合、とりあえず採用を勝ち取りたいと考えるなら役職の希望を伝えるか否かは慎重に判断するべきです。
中には管理職希望であることを「新人の段階で自己主張が強い」などと否定的に捕らえてしまう病院もあるからです。
もちろん、前職で管理職の経験があるのなら、そのことを履歴書に記載しておくのは能力のアピールになるのでかまいません。ただし、その後は転職先の反応に応じて臨機応変に対処するようにします。
面接の場合の役職希望事例
例えば「看護師長の経験があるのですね」などと転職先が興味を示した上で、そのキャリアを転職先で活かしてほしいと考えているような発言があれば、積極的にアピールすればよいでしょう。
逆に「師長まで経験した方が、新人看護師としてやっていけるのですか」「当院での仕事を物足りないと感じるのでは」などとマイナス要素と捕らえるような発言があれば、気持ちを切りかえて新人看護師として謙虚にふるまえることをアピールしなければなりません。
もちろん後者の場合、役職の希望を伝えるのは避けたほうがよいでしょう。
最後に
あなた自身の方向性が少しは見えてきたでしょうか。
もちろん病院それぞれの方針がありますし、求められるものも違いますので「向いている」「向いていない」と簡単に決めることはできません。
それに人間は強い思いがあれば変わっていけるものです。
あなた自身にどうしてもかなえたい理想の看護の姿があり、それを追求したいという思いが強ければ、たとえここに挙げたような要素が足りなくても、自分の目指す道を切り開いていけるでしょう。
我こそはと思う方、ぜひ目標に向かって最初の一歩を踏み出してみて下さい。
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