産業カウンセラーとは、簡単に言えばこころの専門家「話を聴くプロ」であり、働く人やそのご家族を対象としたカウンセリングが主となります。
人の話を「聞く」ことではなく「聴く」ことが大切となり、意外と難しです。
私は看護師の産業カウンセラーとして関わったクライアントが変化していく姿にとてもやりがいを感じ、その方の人生が少しでも心豊かにできる関わりが持てた時、産業カウンセラーとしての素晴らしさを実感することができました。
このページでは、看護師が産業カウンセラーになるための資格取得方法や、苦労したこと、勉強方法と看護師の仕事との両立、看護師が産業カウンセラー資格を現場で活かす方法を私の体験からお伝えします。
- エリア:沖縄県在住
- 保有資格:看護師、保健師、産業カウンセラー
- 施設経験:総合病院 、行政機関(市役所)、健診施設
- 専門分野:外科、ICU、緩和ケア(ホスピス)
私は総合病院の外科と集中治療室で経験を積んだ後、行政機関の産業看護師、健診施設の看護師(たまにツアーナース)を経て現在ホスピス緩和ケア病棟で働いております。看護師と大学院生という二足のわらじでやっております。
看護師が産業カウンセラーになるには?資格取得方法

看護師から産業カウンセラーになるためには、受験するために必要な受験資格を満たし、年に一度行われる産業カウンセラー試験(学科試験・実技試験)に合格することで、産業カウンセラーとして活動することが出来ます。
以下で私の体験を踏まえながら、産業カウンセラー資格取得までの道のりを説明していきます。
産業カウンセラーの仕事内容(活動領域)とは?

産業カウンセラーの仕事内容(活動領域)は、大きく分けて3つあります。
- メンタルヘルス対策への援助
- キャリア開発への援助
- 職場における人間関係開発への援助
いずれの活動領域もカウンセリングを行うことに変わりはありません。
産業カウンセラーが勤務する主な職場として、企業の相談室等に勤務し社員をカウンセリングする場合や、相談専門に行っている企業に勤務する場合が多いでしょう。
産業カウンセラーの資格取得した私は、看護師として病院内で資格を活用する道を選択しました。
さらに詳しくは「一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 東北支部の”産業カウンセラーとは”」を確認しておきましょう。
受験するために必要な要件(受験資格)
看護師が産業カウンセラー試験の受験資格は3つに分かれており、そのうちの1つに該当する必要があります。(2023年3月時点)
看護師の仕事を行いながら産業カウンセラーの資格を取得する場合は、養成講座(通学、又は通信)を受け、「協会が行う産業カウンセリングの学識及び技能を修得するための講座を修了」の条件に該当することが、一般的な方法です。
(だだし、大学や大学院等で、受験資格に該当する学科等を受講していた場合、養成講座は不要となります。)
その他受験資格については、一般財団法人 日本産業カウンセラー協会の「産業カウンセラー試験の受験資格について」を確認しておきましょう。
養成講座は通学か通信か選択できる

一般財団法人 日本産業カウンセラー協会が行う、「産業カウンセラー養成講座」は、「通信(フルオンライン)・通学・通学と通信」の3つのスタイルから選択することができます。
さらに、6ヶ月間コースと、10ヶ月間コース(一部教室のみ)があり、短期集中で行うか、じっくり復習しながら行うかを選択します。
- 6ヶ月間コース:短期集中、最短期間で資格取得を希望の方向け
- 10ヶ月間コース:じっくり復習しながら、マイペースで受講したい方向け
通学可能範囲で講座が開催されているのであれば、通学を選択することをおすすめします。
また、産業カウンセラー養成講座の受講料(教材費を含む)は約30万円の費用が掛かるため、注意しておきましょう。詳しくは一般財団法人 日本産業カウンセラー協会「6か月コースと10か月コースの比較」で確認しておきましょう。
看護師の体験事例
産業カウンセラー養成講座では「通学を選択する」ことで、志が同じ仲間と互いに切磋琢磨することや議論することができ、カウンセリングについて学びを深めることが私はできました。
また、毎週出される課題や試験勉強等も仲間と集まって話し合い、教え合うことができます。私は、一人で勉強するよりはかどり、試験まであきらめることなく、受講することができました。
産業カウンセラー養成講座の詳細

産業カウンセラー養成講座の前半は、座学が多く、カウンセリングの歴史や理論、その効果について事例も踏まえて学びます。
そして、座学で学んだ内容を元に、自分の頭の中で「カウンセリングとは」について整理していきます。
理論を学び終えると、グループを組み「カウンセラー役」「クライアント役」「オブザーバー」を決めて実践を行います。
毎回講師から、時間を決められた中でカウンセリング内容のお題が出題され実践形式(15分程度)で行います。さらに、実践の回数をこなすとお題もフリーとなり、カウンセリングの時間40分と徐々に長くなっていきます。
実践後は、クライアント役、オブザーバーそして講師から、「カウンセラーとしてどうだったのか」と意見をもらい、良い部分や今後の課題と向き合っていきます。
養成講座終了後は試験勉強

産業カウンセラー養成講座終了後は、産業カウンセラー試験に向けて勉強を開始します。
産業カウンセラー試験内容は、筆記(学科試験)・実技試験となり、毎年1月に1度だけ行われ、学科試験と実技県で費用が掛かります。
- 学科試験:10,800円(税込)
- 実技試験:21,600円(税込)
(学科試験、実技試験のいずれかのみ合格した場合、翌年の試験は不要となります。)
試験の勉強方法は日本産業カウンセラー協会が出している参考資料をもとに勉強する方法がおすすめです。
試験の合否発表(3月)
1月の産業カウンセラー試験後、合格発表は3月となります。
合格通知が届いた後は日本産業カウンセラー協会へ産業カウンセラーとして登録します。(登録料は7,000円税込となります。)
産業カウンセラー登録後は、様々な背景のあるクライアントと向き合い仕事を開始します。
産業カウンセラーとしては、まさにここからが勝負ですね。
体験談:私が資格取得で苦労したこと

私が産業カウンセラー資格を取得した際に、苦労したことは、看護師の仕事と勉強の両立です。
産業カウンセラー養成講座は、毎週1回でしたが、毎週出される課題をこなす必要があり、仕事との両立していくことが難しかったです。
産業カウンセラー養成講座終了後、1年間は試験勉強と並行して、同じグループのオブザーバーと講師の先生からカウンセリングにおいて出来ていない部分を指摘されます。
出来てない自分と向き合い、修正と再度カウンセリング実践の繰り返しという作業に心が折れそうになりました。
産業カウンセラーの試験に合格し、実際に活躍している自分のイメージを糧に、辛さを乗り越えられる努力をしました。
これから産業カウンセラーを目指す看護師の方へ、私からのアドバイスは、「苦労を超えた先にある、自分が理想と感じる産業カウンセラー像をイメージし、目標に努力すること」です。
また、どうしても辛いときには、家族や仲間に、アウトプットとインプットを繰り返し、時には叱咤激励してもらうことで、自分自身でモチベーションをあげることも大切でしょう。
資格取得までの私が行った勉強方法と看護師の仕事との両立

以下で看護師の仕事と両立するためのおすすめの方法と、私が行った産業カウンセラー資格を取得するまでの勉強方法を説明していきます。
固定休の仕事であれば休日に通学講座を受けると良い
看護師としての仕事の休みが、固定休の場合、仕事の休みの日に通学講座を選択することがおすすめです。
おすすめの理由としては、以下の点が挙げられます。
- 通学講座であれば仲間と講義などの相談もできること
- 仕事と産業カウンセラーの講義に対してメリハリがつくこと
看護師の仕事と試験勉強をしっかり分けることで、効率よく勉強もでき、理解度も向上します。
私の体験ですが、看護師の仕事が固定休であれば、試験勉強との両立はしやすいです。
不定休の仕事の場合は通信制の講義がおすすめ
看護師として病院などで働いており、不定休(シフト制)で、産業カウンセラーを目指す場合は、講義日時を固定しにくいため、「通信制(フルオンライン)」又は「通信・通学」の選択が良いと感じます。
通信であれば、自分が好きな時間に講座を選択できます。
産業カウンセラーの講義と仕事を両立するには、看護師自身の仕事と、生活スタイルに合わせて選択することが大切です。
養成講座でのカウンセリング評価が高い場合は実技試験免除になる
産業カウンセラー養成講座でのカウンセリング評価が高い場合、実技試験が免除になることもあります。
実技試験の免除を狙うためには以下の方法がおすすめです。
- クライアント役・カウンセラー役・オブザーバーどの役割になっても気づきを得て発言すること
- 講義外も知り合いにクライアント役を頼んで自分のカウンセリングを評価してもらうこと
- 仕事や生活においても傾聴することを意識づけること
ただし、免除になるとは限りらないため、最低限、毎回の講義におけるカウンセリングの実践には集中して取り組むことが必要です。
私は座学で学んだことを実生活と結びつけることで「カウンセリングとはこういうことか」と、理解度を上げていきました。
実技試験の評価対象はカウンセラー役だけではないため注意
産業カウンセラーの実技試験において、カウンセラー役だけが評価の対象ではなく、クライアントやオブザーバーとしても、ひとつのカウンセリング内容からどれだけの学びを得ることができ、そして理解しているのかも実技試験の評価対象です。
そのため、産業カウンセラー養成講座では、クライアント役やオブザーバーとなった場合でもしっかりと取り組んでおきましょう。
勉強する時間を毎日1時間設け、仕事と両立した
人それぞれ勉強方法はあると思いますが、私は短期集中で勉強を行った方が頭に入りやすい印象でした。
そのため、産業カウンセラーの勉強時間は1日1時間としていました。
勉強を1時間だけ集中すれば良いと思えば、無理なく継続することができ、看護師の仕事との両立が行いやすかったです。
また、短期集中型で勉強をする場合は、産業カウンセラー養成講座後の1時間、看護師の仕事後の1時間、眠る前の1時間など毎回固定して設けることがおすすめです。
私は1日の中で勉強する時間をルーティーン化(タイミングを固定)した方が、毎日の勉強内容も頭に入りやすい印象でした。
教科書を振り返り自分の頭の中に落とし込みを行った
産業カウンセラー試験の勉強は、暗記ではなく「理解する」ことが重要でした。
産業カウンセラーの筆記試験では、講座中に使用した教科書を振り返り、自分の頭の中に落とし込み理解することが大切だと感じます。
個人的な意見ですが、きれいで見やすくノートにメモをしても、理解しなければ役には立ちませんでした。
私が行った教科書の振り返りや、理解するための落とし込み方法としては、以下の通りです。
- 教科書の読み込みでは余裕をもってあまり詰め込みすぎないこと
- メモ帳等に講義や教科書の特に重要な内容を繰り返し書き込むこと
- 教科書に自分が理解しやすいように追記すること
- 書き込んだ要点や教科書の重要な部分は何度も読み込むこと
予習や復習では教科書だけでなく、余裕があれば日本産業カウンセラー協会が出している参考資料を読むこともおすすめです。
看護師が産業カウンセラー資格を現場で活かす実践方法

私は、産業カウンセラーの資格取得後は看護師として病院に勤務しています。
産業カウンセラーの資格を取得後、カウンセリング術は看護師の仕事における、ありとあらゆる場で応用・実践ができると私は感じました。
例えば、以下のようなコミュニケーションが必要な場面です。
- 患者やその家族、看護師との関係性
- 職場の上司や同僚との関係性
- 医師やコメディカル等の多職種との関係性
産業カウンセラーは「話を聴くプロ」です。相手との会話の中で受容・共感・自己一致のプロセスを理解できるため、より相手の気持ちに沿ったコミュニケーションを図ることができます。
また、産業カウンセラーは会話というコミュニケーションを通じて、相手の思いを表現しやすい環境作りを行い、その思いに共感する姿勢は、相手の自己効力を高めること、強い信頼関係を築けることに繋がります。
以下では、私が病院内で産業カウンセラー資格を活かした、具体的な事例をご紹介します。
事例1:ネガティブな患者の心を開くためにカウンセリングを活用
病院の入院患者は、寂しさや不安からネガティブな会話や思考になることが多く、産業カウンセラーとして、以下のことを行いました。
- その時の気持ちを否定しない
- その場の雰囲気を無理に変えようとはしない
- 相手の気持ちに共感する姿勢を持つ
看護師として、産業カウンセラーとして、患者の話を聴き、共感を続け、長く関わる中で、自ら少しずつ幸せに感じることなども話すようになりました。
固く心を閉ざしてしまう患者にも産業カウンセラーは役立つ
患者の中には、様々な要因により心を固く閉ざしてしまい、看護師との会話も強く拒否してしまう場合もあります。
そして、看護師が患者から会話を拒否されることで、時には仕事が滞る事態にもつながります。
そのような際に、産業カウンセラーとして、カウンセリングの技術を使い、患者に寄り添うことで、少しずつでも心を開いてもらうことができます。
もちろん患者の心はすぐに変えることはできません。少しずつ前向きになれる関わりを、看護師として、産業カウンセラーとして持つことが大切だと私は感じます。
事例2:カウンセラーの「聴く」技術で仕事を円滑にする
看護師は医師の治療やケアの方針が納得いかず、意見がぶつかることもあります。
しかし、産業カウンセラーとしての技術があれば、医師がどのような考えで、その治療を進めているのか気持ちを聴くことで、腑に落ちる部分も見つけることが可能です。
医師に理解を示し、私自身(看護師)の意見を伝えることで、信頼関係がうまれ仕事も円滑になりました。
産業カウンセラーとしての「聴く」技術は患者だけではなく、職場で関わる全てのスタッフに活用できると私は考えています。
まとめ
私は看護師として産業カウンセラーを資格取得したことで、カウンセリングを学び、患者やその家族、一緒に働くスタッフとの関わりが密になりました。
また、その方たちが、何を必要としているのか私は知ることができ、その方の必要にあった看護やコミュニケーションの取り方を実践できています。
私は看護学生の際も「傾聴」の必要性を学びましたが、産業カウンセラーと学び直し、実践やその分析を行わない限り、聴く姿勢を自分の中に落とし込んでいくことは難しいと思います。
患者やその家族の気持ちに沿った看護を実践していきたいという思いがあれば、是非、産業カウンセラーの資格を取得することをおすすめします。
新卒で東証スタンダードに上場している会社に入社し、個人事業主・税理士などの経理・税務サポートを担当後、半導体・電子部品等の最大手(東証プライム上場)に転職し、営業支援に従事する。その後、ベンチャー企業での経理・採用経験を経て、2019年から株式会社pekoにて、キャリアアドバイザーとして看護師の転職支援を始め、多くの転職者のサポートを担当中。
