地域で母子保健に関わるということは、妊娠・出産・育児までのつながりを支援するということです。
母親や家族は、妊娠・出産・育児を通して特有の悩みや疑問を抱いているため、母子保健相談員が悩みに寄り添い、それぞれの生活に合った解決方法を一緒に考えることが求められます。
厚生労働省は、平成26年に妊娠・出産包括支援モデル事業を実施しました。
母子保健に対する支援の重要性が説かれたのは、
- 核家族の増加
- 高齢出産
- 不妊治療の普及
等の多種多様な背景からであり、家庭支援事業に取り組む自治体も増えています。
ここでは、私が働いた経験を元に、母子保健相談員(母子保健相談支援員)になる方法と仕事内容、働いて感じたことを説明していきます。
都内の周産期センターで4年間勤務。その後地域のクリニックで分娩介助を主に担当。学生時代から興味のあった母子保健に関わりたいと思い、現在は保健センターで助産師として保健師の方々と働いています。臨床の視点、地域の視点、様々な関わり方を学んでいる毎日です。みなさんが転職を考えるためのひとつの引き出しになれるような記事を書けるようがんばります。
保健師・助産師が母子保健相談員になるためには

保健師・助産師が母子保健相談員として働くためには、応募資格をクリアした上で、地方公務員試験(採用試験)を受験し合格することが必要です。
数は限られますが、採用している自治体もあるため、希望エリアの自治体の公式ページをチェックすることが大切です。
助産師・保健師いずれかの資格が必要
母子保健相談員には、助産師・保健師の資格が応募条件である自治体がほとんどです。
保健師としての広い知識と、助産師としての専門的な立場から地域の母子支援ができると雇用側(自治体)にも利点があるためです。
また、保健師資格だけでも採用している自治体は多いですが、「母子保健事業に関わったことがあること」が条件として付与されている場合もあるため注意しましょう。
産婦人科等の経験はあった方が良い
母子保健相談員は、地域に暮らす妊婦や育児をしている方々へ直接助言や支援をするにあたり、産婦人科での経験は保健師や助産師の非常に大きな武器となります。
(採用面接時にも有利に働く可能性はありますが、必ずしも必要な経験ではありません。)
また、母性看護の専門家としての立場から母子保健事業の見直し、改善のために意見を求められることもあります。
そして、新生児集中治療室(NICU)での経験も、早産児や疾患を抱えながらも退院し家庭で育っていく子どもたちへの支援に役立ちます。
年齢要件は緩和されている
自治体で保健師・助産師働く場合、基本的には転職する場合が多く、年齢要件は緩和されています。
「地方公務員は30歳から35歳まで」というイメージがあるかもしれませんが、資格職の場合、定年までの年齢で募集している場合が多く、年齢要件はあまり考える必要がありません。
各自治体の試験対策をすること
母子保健相談員の採用試験方法は、各自治体によって異なるため事前に把握し、対策をしておくことが必要です。
面接では、
- 今までの臨床経験
- 今までの母子保健事業経験
- 病院ではない場所で仕事をしたいと考えた理由
- 現在の母子保健にまつわる問題についての意見
- 今まで体験したクレーム対応
- 対応困難事例
等を尋ねられるため、答えを準備しておきましょう。(以上は私の体験になります。)
採用試験について
採用試験は、履歴書による書類審査や面接を行っている自治体が多いです。
書類審査を通過すると面接試験があり、その後書面で試験結果が通知されて合格の場合は採用となります。
また、面接以外に、母子保健に関する小論文の提出を必須にしている自治体もあります。
希望地の公式サイトを確認する
母子保健相談員の臨時採用の場合は、各自治体のホームページ上などで会計年度任用職員を募集している場合があります。
新年度の4月に採用情報が増える傾向にありますが、産休代替などで時期がずれることもあるため、複数の勤務希望地の公式ホームページはこまめにチェックしましょう。
会計年度任用職員の採用も多い
母子保健相談員は、自治体によっては会計年度任用職員の募集のみを行っている場合もあります。
会計年度任用職員は、自治体の繁忙期や職員に欠員が生じた際等に、正規職員の補助として一会計年度内を任期として任用される非常勤の公務員を指します。
また、職員の身分は、地方公務員法が適用される一般職の地方公務員となります。
(引用:公務inブログ)
保健師、助産師が母子保健相談員の会計年度任用職員になり、注意すべき点としては、パートタイム(月給)とフルタイム(時給)があることです。
パートタイムとフルタイムでは、自治体によって勤務時間や各種手当、賞与、各種保険、服務規律などが異なってくるため、募集要項は詳しく確認しておきましょう。
また、任期(働く期間)は原則1年度以内(4月1日から翌年3月末まで)となり、更新(再度任用)される場合もありますが、1年度以内に終了する場合もあるため、注意しましょう。
母子保健相談員の仕事内容

母子保健の充実化として、母子保健相談員が妊娠届を提出した妊婦との面接を実施する自治体が増えています。
母子保健相談員が妊婦と面接をする目的は、
- ハイリスク群のスクリーニングとしての意義が大きい
- 多くの妊婦が持つ疑問や悩みに個別的に応えることができる
等があります。
母子保健相談員との面接は、妊婦にとってニーズが高いため重要な仕事であると言えます。
また、各自治体によって異なりますが母子保健相談員は、保健福祉センター(健康課)、子育て世代包括支援センター、妊娠・出産包括支援センター等の勤務となります。
母親・両親学級の運営をする
母子保健相談員は、集団教育として両親学級の運営を行います。
両親学級等の集団教育を病院でなく地域でやることの意義としては、「病院以外にも相談できる場所があることを知ってもらう」ことがあります。
母親・家族の相談対応をする
妊娠期・産褥期(さんじょくき)・育児・時期によって変わる家族の様々悩み・疑問に対して、面接や電話で相談に乗ることも母子保健相談員の仕事の一つです。
補足説明
多様な家族・社会背景から、周囲からの支援が少ない妊婦に相談窓口として認識してもらうことも、切れ目のない支援をするために大事な役割を担っています。
新生児訪問をする
周産期の専門家として力を発揮できる事業として新生児訪問があります。
産院を退院後に家庭に伺い、新生児の体重測定、母乳・育児相談、地域で提供しているサービスの情報提供等を行います。
補足説明
生後1カ月から場合によっては3カ月になる新生児がいる家庭に伺うこともあります。
乳幼児健診を行う
母子保健相談員は、保健師と一緒に健診の介助をすることもあり、問診での子どもの発達確認、計測、医師の診察介助などを行います。
病院ではなかなか接することのない年齢の子どもの成長発達を学ぶことが必要です。
母子保健事業の検討会議へ出席する
母子保健相談員は、母子保健事業の見直し・改善に向けて専門職としての意見を求められ、関わっている事業の分析・数値化・周産期の知識など様々な角度から検証をします。
所属する保健センターだけでなく近隣のセンターとの共同会議にも意見交換のために出向くことがあります。
母子保健相談員の一日のスケジュール
母子保健相談員(助産師)として地方の保健センターに勤務している、私の1日のスケジュールは以下の通りです。
| 8:30 | ・朝会議 ・保健師ミーティング |
|---|---|
| 9:00 | ・前日までに提出された妊娠届・出生連絡カードの整理 |
| 10:00 | ・母子保健事業関係者会議に出席 |
| 12:00 | ・帰社 ・昼休憩 |
| 13:00 | ・会議の議事録作成 |
| 14:00 | ・妊娠届・出生連絡カードで把握したハイリスクケースを地区担当保健師へ申し送り |
| 14:30 | ・新生児訪問 |
| 15:30 | ・帰社 ・新生児訪問記録整理 |
| 16:00 | ・翌日の相談事業予約者に電話確認 |
| 16:30 | ・ハイリスク妊婦への電話連絡 |
| 17:00 | ・日報整理 |
| 17:15 | ・退社 |
随時、妊娠届出面接や電話・来所相談対応、保健所や福祉センターなどの関係機関との情報共有・連絡を行います。
私が母子保健相談員として働いて感じたメリット・デメリット

私の経験を元に、母子保健相談員として働いて感じたメリット・デメリットを説明していきます。
また、行政保健師への転職を考えている看護師にとって、母子保健相談員は仕事をしながら勉強もできるという最高の環境であると言えます。
妊娠・出産・育児の継続的な支援ができる
母子保健相談員として、周産期から育児へのつながりを支援し、継続的なサポートをすることで妊婦・育児をしている人との強い関係性が築けることにやりがいを私は感じます。
育児の悩みに寄り添うことで、母親や家族の安心した笑顔を見られたときは「母子保健相談員をやっていて良かった」と強く思います。
幅広い知識は必要となる
乳幼児健診の場で、月齢・年齢での成長発達を見極めることは、慣れるまで難しかった印象が強いです。
しかし、子どもの成長過程を知ることは、女性を支援する助産師としてプラスになりました。
新生児訪問などは、基本的には1人で対象者に関わることが多いため母子保健相談員は、幅広い知識を得る必要があります。
思ったより休みが多い印象
私が非常勤勤務体系であることも影響していますが、病棟勤務に比較すると遥かに休みが多く、土日祝日が必ず休みであることは大きな魅力と言えます。
また、各自治体によりますが、私の勤務日数は週3~5日勤務であることが多いです。
勤務形態が正規雇用ではないことが多い
母子保健相談員を正規雇用で募集している自治体は限られており、多くの場合は産休代替などの会計年度任用職員(期限付き採用)であることが多いです。
病院に正職員で勤務している場合と比較すると、収入面では不安定であることが言えます。
ただし、パートタイム会計年度任用職員の場合、副業を禁止されていなければ、休みの多さを活かしてスキルを活かしながらアルバイトをすることも可能です。
まとめ
母子保健相談員は、地域母子保健事業を担う助産師・保健師の名称として使われています。
地域で暮らす母子・家族の個別性を知り、変化に寄り添うことは簡単ではありませんが、病院では得られないことや、やりがいも多くあります。
病棟勤務をしていた看護師にとっては、仕事のスタイルが大きく変わるため新鮮さもメリットでしょう。
「活動の場を変えてみたい」「長期的な支援をしたい」と考える看護師は、ぜひ選択肢の一つとして考えてみてください。
新卒で東証スタンダードに上場している会社に入社し、個人事業主・税理士などの経理・税務サポートを担当後、半導体・電子部品等の最大手(東証プライム上場)に転職し、営業支援に従事する。その後、ベンチャー企業での経理・採用経験を経て、2019年から株式会社pekoにて、キャリアアドバイザーとして看護師の転職支援を始め、多くの転職者のサポートを担当中。
