辛い実習や国家試験の勉強を乗り越えて、晴れて看護師として就職した急性期病院。
就職した当初はとにかく無我夢中で何をやっているのかも分からないくらいだった新人看護師の皆さんの中には、最近「急性期病院に就職したけれど、自分には合わないのでは?」と考え始めたかたもいらっしゃるかもしれません。
私は急性期病院で10年以上勤務しており、急性期病院の看護師として働くメリットについて整理し、「急性期が合わない」と感じた時に「どんな事を考えたり」「行動したり」すると良いのかについて、体験から説明します。
急性期が合わないのではなく経験が足りないだけ?
そもそも、看護師自身が「自分は急性期が合わない」と感じたのはどんな事がきっかけなのでしょうか。
もし、あなたが合わないと考える理由が、
- 「仕事のスピードについていけない」
- 「仕事が覚えられない」
- 「先輩に毎日怒られる」
といった理由で急性期が合わないと感じるのであれば、それは「急性期が合わない」のではなく、自分の仕事の経験が足りていないだけと言えます。
もちろん、急性期は、看護師一人当たりに、毎日2件も入院患者を看る場合もあり、数日の間に1件取るのとでは看護師自身への負担は大きく違います。
急性期病院に入職してすぐに仕事はこなせない
入職して1年もたたないうちに要領よく仕事をこなせる新人看護師はほとんどいません。
2年、3年と経験を積んでいくなかで、「この業務は後回しにして、後でまとめてやろう」といった仕事の効率化や、「申し送りの時間に近いので、この業務はあと回しにしよう」といった優先順位づけができるようになっていくのです。
新人看護師のうちは、基本的な業務手順をしっかり身につける事が大切ですし、何もかも初めての経験なので、先輩看護師のように「一度やったら次からは独り立ち」というのは高いハードルです。
新人看護師が急性期病院で働くメリットを整理しよう
就職活動をする際に、「とにかく新卒のうちは急性期病院で経験を積むもの」と思い、それ以外の職場については調べてもいないという人も多いのではないでしょうか。
必ずしも「急性期病院で看護師として経験を積むべき!」とは言い切れませんが、新人看護師が急性期病院で働くメリットについて整理をしてみます。
整った教育体制
急性期病院で働くメリットとして最も大きい点が、整った看護師の教育体制です。
急性期病院の多くは看護部の規模も大きく、毎年新人看護師を100人以上採用する病院も珍しくありません。そのような病院では、体系化された新人教育プログラムが用意され、専任の教育担当看護師が配置されているところもあります。
新人看護師の教育に慣れているため、入職したこの時期にはこの研修、少し慣れてきた頃にはこの研修、といったように多くの新人看護師が必要とする内容の研修を必要なタイミングで実施してくれます。
自分が新人看護師として望まれるレベルに対して今どの程度の位置にいるのかも分かりやすいでしょう。
急性期ならではのアセスメント能力の向上
急性期とは、患者さんが病気を発症し急激な変化をとげる状態を指します。
そのため、患者さんの状態が時間ごとに変化する場合も多く、常に身体の状態をアセスメントし、次に起こる変化を予測してケアにあたる事が求められます。
勉強をしなければならない事が多いため、業務もまだ覚えられない新人看護師にとっては大変な毎日でしょう。
しかしながら、慢性期であっても患者が急変する可能性は常に念頭に置いてケアにあたる必要があります。急性期病院で身につくアセスメント能力は、どこの組織で働いたとしても通用する重要なものなのです。
レベルの高い看護師と働くことができ、勉強の機会が多い
急性期病院には、認定看護師や専門看護師、その他学会認定の資格を持った看護師など、エキスパートが勤務している事が多いです。
そのような資格を持った看護師達は、講義形式の勉強会だけでなく、病棟など実際の現場に出向いて知識や技術の指導をしてくれる場合もあり、臨床にすぐに役立つ知識や考え方を学ぶ事ができます。
急性期病院は、そういった専門的な資格を持つ看護師が主催する勉強会が実施される事が多く、学ぶ機会が多いと言えるでしょう。
同期の看護師が多い
急性期病院のメリットの一つとして、同期看護師の多さも挙げる事ができます。
急性期病院の多くは毎年多くの新人を採用し、一つの部署に新人看護師が10人近く配属される事もあります。
看護部の研修の一環として、新人看護師同士で自分の悩みや思いを共有する場を設けるところもあるくらい同期看護師の存在とは重要なものです。
逆に慢性期病院などで新人看護師の採用が少ないと、部署に配属された新人看護師が自分だけという場合もあります。
するとお昼休憩も先輩看護師だけに囲まれて一息つく時間もないかもしれません。部署によっては新人看護師が配属されない年もあり、いつまで経っても自分が一番若手のまま、という事もあります。
その後の転職に有利となる
看護部の整った教育体制から、急性期病院で経験を積んだと聞くと多くの人は、「整った組織で勉強をした一人前の看護師である」というイメージを抱きます。
「ほとんど働いた事がない看護師」よりは「あの大きな病院で教育を受けて働いていた看護師」の方を採用したいと思うのは自然な事でしょう。
そのため、転職を考えた時に有利な条件となります。
将来設計が曖昧ならば、3年は急性期病院に留まってみては?
ここまで急性期病院のメリットについてお話をしました。
もし今あなたが「何年後までにこの分野を経験したい」といった目標があまりなければ、少なくとも3年間は急性期病院に留まる事も検討してみてください。
というのも、どんな組織にいっても基本的な看護業務は結局同じであり、患者さんの状態を評価して看護問題を抽出しケアを展開していく看護過程も同じだからです。
一つの組織で基本をしっかり身につけていると、転職をしたとしても、身につけた事を応用させていくだけなのでなじみやすいでしょう。
今は新人看護師向けの研修も3年間かけて行われる事も多いです。
組織で3年間じっくり働いて、看護師として必要な基本的な知識や技術を身につけるのも、自分の将来を考えるうえで大切な選択肢の一つです。
病院内で異動して環境を変えることで解決することもある
どうしても、急性期病院が嫌だという看護師の方もいるでしょう。
例えば、
- 「ほんの数日で患者さんが退院してしまい、まともに話す時間もない環境が嫌だ」
- 「一日何件も入院や緊急手術が入るような緊張感に耐えられない」
などの思いがある人は、いきなり転職を考えるのではなく、病院内の異動を考えてみてください。
組織自体が急性期病院である以上、限界はありますが、それでも部署を変える事で患者さんの入れ替わりの頻度や部署の雰囲気を多少変える事ができます。
安易に慢性期病院への転職や、他の分野の転職に向かわず、自分の所属する組織の中で問題の解決ができないか検討してみましょう。
逆に、急性期病院以外に転職した方が良い新人看護師って?
現在の病院での異動では解決しにくい場合や、行いたい分野が決まっている場合などは転職を検討しても良いかも知れません。
例えば、慢性期病院に転職を希望する場合は、患者さんの多くは急激な変化が起こる事が少なく、生活をする事が主体となります。
看護師は家族を含めた患者さんの生活全体を支える事となり、方向性が自分には合っている、そのような病院での教育を受けて働きたいと決めた人は転職を検討しても良いかもしれません。
最後に
新人看護師が急性期病院で働くメリットとしては、教育体制の充実や同期看護師の多さなどが挙げられます。
もし自分には急性期の看護が合わないと感じても、それが本当に急性期である事が原因なのか、単に経験が不足している事からくるものではないのかをよく考えて、慢性期病院ならやっていけると安易に考えないようにしましょう。
新人看護師が「急性期が合わない」と感じるのは、もしかしたら自分の将来を考えるタイミングが来ているのかもしれません。
これを機に、自分がそこにいる意義を再確認し、看護師としての将来設計を見直してみるとよいでしょう。
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