多発性骨髄腫患者の看護(看護計画・症状・注意点)

多発性骨髄腫は、血液細胞の1つである「形質細胞」のがんです。この形質細胞ががん化して骨髄腫細胞になり、多発性骨髄腫を発症します。

骨髄腫細胞は骨髄の中で増加し、異物を攻撃する能力がなく、役に立たないMタンパクをつくり続けます。

多発性骨髄腫は骨髄腫細胞やMタンパクによってさまざまな症状を引き起こす病気です。多発性骨髄腫は症例によっては無治療でもまったく進行しないものから、急激に進行するものまで様々です。

このページでは多発性骨髄腫患者の症状や看護計画などについて説明していきます。

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多発性骨髄腫の病型の分類

多発性骨髄腫の病型の分類

国際骨髄腫作業部会(IMWG:International Myeloma Working Group)による診断基準で骨髄腫およびその関連疾患は8つの病型に分類されます。

分類は骨髄腫細胞の有無、血液・尿中のMタンパクの有無、臓器障害(高カルシウム血症、貧血、腎障害、骨病変など)の有無などによって評価され、治療開始時期などを見極めます。

以下代表的な3つを挙げます。

くすぶり型多発性骨髄腫(無症候性骨髄腫)

骨髄腫細胞やMタンパクが一定量以上に増加していますが(血清Mタンパク量3g/dl以上、骨髄中単クローン性形質細胞10%以上)、症状はほとんどなく臓器障害も伴いません。

積極的な治療は行わず、定期的な検査を行います。

意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS:Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance)

骨髄腫に関連した臓器障害をみとめず、血清Mタンパクが3g/dl未満であり、骨髄中単クローン性形質細胞が10%未満と定義され無症候性と区別され、治療の必要はありません。

骨髄腫に進展する可能性があり、定期的な検査を行います。

症候性骨髄腫

血液や尿中のMタンパクと骨髄腫細胞が増加し、骨髄腫による臓器障害があります。

薬物療法や造血幹細胞移植(自家移植)などの治療を行う必要があります。

多発性骨髄腫の患者の症状

多発性骨髄腫の患者の症状

多発性骨髄腫の症状は人により様々であり、時には無症状の患者もみられます。

骨髄腫細胞が骨髄の中で増えたり、Mタンパクが増えることにより以下の症状がみられます。

造血抑制

これにより貧血や白血球減少により易感染状態、血小板減少により出血傾向が高くなります。

Mタンパクによる症状

正常免疫グロブリン低下により易感染状態となります。

Mタンパクの一部がさまざまな組織に沈着して、臓器機能を低下させる状態になるアミロイド―シス、血液の粘性が高くなり、血液の循環が悪化する過粘稠度症候群、Mタンパクが糸球体に沈着して腎障害が起こることがあります。

骨破壊

骨髄腫瘍細胞によって破骨細胞が骨の組織を破壊してしまい、骨痛や病的骨折、圧迫骨折、カルシウムが血中に流れだし高カルシウム血症が起こります。

多発性骨髄腫の治療方法

多発性骨髄腫の治療方法

多発性骨髄腫に対する治療は、骨髄腫細胞を減少させるために薬物療法を行い、条件が合う場合には大量抗がん剤投与を併用する造血幹細胞移植を行います。

移植ができる患者の場合

重要な臓器の機能が保たれている65歳未満の患者には寛解導入療法を行い、抹消血幹細胞採取し大量化学療法後、自家造血幹細胞移植を行う流れで行います。

導入療法

標準的に用いられていたビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン(VAD療法)もありますが、ボルテゾミブ、デキサメタゾン(BD療法)も推奨されており3~4コース行います。

より高い効果を期待できる導入量法としてBD療法にシクロホスファミドを追加したCBD療法もあります。

大量化学療法

大量メルファラン療法を行います。

移植ができない患者の場合

66歳以上の患者、および65歳以下で重要な臓器の障害などのために自家移植を行わずMP療法や多剤併用療法を行います。

サリドマイドの使用について

化学療法に反応しない難治症例ではサリドマイドの使用もされています。

サリドマイドは催眠鎮静剤として販売されましたが、妊娠中の女性が服用することにより先天性の胎児奇形を引き起こしたため世界各国で販売中止となった薬です。

しかし、サリドマイドが多発性骨髄腫に対する治療薬として有効であることが報告され、日本でも多発性骨髄腫に対する治療薬として再承認されました。

安全管理システムの遵守が医療機関に義務付けられている

現在は「サリドマイド製剤安全管理手順(TERMS®)」という安全管理システムの遵守が医療機関に義務付けられており、患者へも正しい使用方法の教育を行ってから使用することとなっています。

多発性骨髄腫の患者で看護師が注意しなければならない症状

多発性骨髄腫の症状だけではなく、化学療法による症状の観察を行っていかなければいけません。

特に大量化学療法を行うことにより骨髄腫細胞を死滅させるだけではなく、正常な血液細胞も減るためそれに伴う副作用に注意する必要があります。

感染症状に注意する

腫瘍や化学療法の副作用により、易感染状態となります。場合によっては重篤な感染症をきたすこともあるので注意が必要です。

具体的に注意する症状は、

  • 発熱
  • 感冒症状
  • 検査データ
  • 肺音
  • 食事量

などが挙げられます。

病的骨折による疼痛に注意する

多発性骨髄腫でよくみられるのが圧迫骨折です。病的骨折や骨痛が起きることもあり、ビスホスホネート製剤の使用や、ペインクリニックにコンサルトし、疼痛緩和につとめる場合もあります。

補足説明!

補足事項
ビスホスホネート製剤使用時には稀に歯肉や下顎骨の壊死が生じることがあるので、歯科治療を行います。

腎障害による症状

多発性骨髄腫ではMタンパクの沈着や高カルシウム血症により腎障害が起きることがあります。

また、抗がん剤治療によりさらに腎機能が悪化する可能性があるので注意する必要があります。

具体的に注意する症状は、

  • 検査データ(クレアチニン、尿素窒素、尿酸、アルブミン、尿たんぱく)
  • 浮腫
  • 倦怠感
  • 食欲不振

などが挙げられます。

栄養状態の低下に注意する

抗がん剤の治療により嘔気、嘔吐の出現や倦怠感、口内炎の出現により食欲不振が見られ栄養状態の低下をきたすおそれがあります。

具体的に注意する症状は

  • 食事摂取量
  • 体重減少の有無
  • 検査データ

などが挙げられます。

転倒に注意する

化学療法の副作用により、貧血や倦怠感によるふらつきや長時間点滴をするため点滴台を押しながら生活をするため転倒しやすくなります。

具体的に注意する症状は

  • 倦怠感、ふらつきの訴え
  • 検査データ

などが挙げられます。

多発性骨髄腫患者の看護計画

多発性骨髄腫患者の看護計画

発性骨髄腫の患者は化学療法の副作用への看護が重点に置かれます。また、治療や副作用への不安が出現するため精神的フォローも必要です。

また、骨病変がある場合は疼痛の訴えもあるため、その看護も必要です。

化学療法による易感染状態

看護目標・重篤な感染症を予防することができる
・感染予防行動をとることができる
OP(観察項目)・バイタルサイン
・検査データ(CRP、WBC、好中球数など)
・肺音聴取、呼吸状態
・咳嗽の有無
・食事量、水分量
・表情や言動
TP(ケア項目)・環境整備を行う
(手を触れる場所は消毒を行う)
・清潔操作を徹底する
・必要時にはクリーンルームを使用する
EP(教育・指導項目)・化学療法を行うことにより易感染状態となることを説明する
・患者と家族へ身体の保清や最近の媒体予防のための環境調整の必要性について説明する
(手洗いや口腔ケアの必要性について)
・ペットボトルから直接飲まず、コップへ注いで飲むよう指導を行う
・食事は加熱したものを摂取するよう指導する
・感冒症状など異常があった場合はナースコールをするよう説明する

治療や治療の副作用に対する不安

看護目標・患者が不安の表出をすることができる
OP(観察項目)・不安言動の有無
・睡眠状態
・食欲
・脱毛の程度
TP(ケア項目)・患者の思いを傾聴する
・医師の指示により必要時は睡眠剤を使用する
・治療内容や点滴時間を前もって説明する
・必要時は精神科へのコンサルトを検討する
・枕元にタオルを敷いて毎日交換する
・同意が得られれば散髪を行う
EP(教育・指導項目)・不安や気になることがあれば自由に表出して良いことを伝える
・髪の毛は治療が終われば生えることを説明する

病的骨折による急性疼痛(長期化するれば慢性疼痛)

看護目標・鎮痛剤や対処療法で疼痛緩和した状態で過ごすことができる
OP(観察項目)・骨折部位の観察
・骨X線・CT・MR検査
・患者の表情
・食事量
・ADLの状態
・疼痛スケール
(VAS、フェイススケール、NRSなど患者にあったスケールを使用する)
TP(ケア項目)・疼痛増強時は医師の指示により頓服薬を使用する
・温罨法を施行する
・マッサージを施行する
・必要時ADLの援助を行う
・骨病変の部位により、コルセットの使用する
EP(教育・指導項目)・鎮痛剤の正しい使用方法について説明する
・疼痛緩和の方法(温罨法など)を説明する
・コルセットの正しい使用方法について説明する

化学療法の副作用に転倒・転落のリスク状態

看護目標・転倒・転落せず入院生活を送ることができる
OP(観察項目)・血液データ
・バイタルサイン
・ふらつき
・過去の転倒歴
TP(ケア項目)・ベッド柵を設置する
・環境整備を行う
・点滴台は移動しやすいものを選択する
EP(教育・指導項目)・化学療法の副作用によりふらつきやすく転倒しやすいことを説明する
・点滴中の移動は注意するよう説明する
・ふらつきがあればナースコールを押すよう説明する

多発性骨髄腫の患者の看護の注意点

多発性骨髄腫の患者の看護の注意点

薬の管理

化学療法を行うため、的確に医師の指示通りに薬液を施行することができているか確認を行うことが重要ですし、抗がん剤により副作用は様々であり、患者の状態に合わせて薬を調整するので把握していくことが必要です。

また、サリドマイドを使用することもあるので、その管理や患者指導も必要となっていきます。

感染予防

大量化学療法を施行することで免疫力が落ち、易感染状態となるため重大な感染症にならないために環境整備や患者の保清が重要となっていきます。

また、クリーンルームや無菌室での管理となります。

心理的援助が必要

化学療法に対する不安や副作用への不安、検査も血液検査だけではなく骨髄検査も定期的に行い、大量化学療法時にはクリーンルームや無菌室への隔離されるため患者の苦痛は多く精神的なケアを行う必要があります。

まとめ

まとめ

多発性骨髄腫は症状や治療が患者によってひとそれぞれです。

全く、貧血や骨病変の訴えがなかった患者もいれば、骨病変により圧迫骨折の疼痛で苦しむ患者もいます。

そのため重点を置く看護の内容は患者それぞれで変化していきますので、患者がどの症状を問題として抱えており、どの治療段階にいるのか理解する必要があります。

今回挙げさせていただいた看護計画を参考の一つとし患者に合った看護を行っていきましょう。

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