看護師だって、自分のお城をもって、自分の看護を追求したい。そんな夢を持つ看護師が増えています。その夢の実現の一つの形が、看護師による訪問看護ステーションの開設です。
看護師が訪問看護ステーションを開設するため苦労や開設の費用、開設から開業までの流れを詳しくご説明しながら、実際に訪問看護ステーションの立ち上げに参加した看護師の体験談をお伝えします。
訪問看護ステーションの開設に興味がある看護師の方はぜひ参考にしてください。
開設・開業に必要な準備・費用

訪問看護ステーションの開設・改行を行う場合には、必要な準備や費用の確認を行いましょう。
訪問看護ステーションの管理者になること
看護師が訪問看護師ステーションを開設するにあたり、自分色の看護を提供するためには、訪問看護ステーションの管理者になることが必須条件です。
また、訪問看護ステーションの管理者になる条件としては、
- 保健師資格又は正看護師資格
- 医療機関における看護、訪問看護または老人保健法第19条の訪問指導の業務に従事した経験のある者
- 保健婦助産婦看護師法第14条第3項の規定により業務の停止を命じられ、業務停止期間終了後2年を経過しない者に該当しない者
以上のことを満たしている必要があります。
さらに管理者は原則、週40時間以上勤務できる常勤者であることが必要です。
訪問看護師の経験がなくても管理者になれる?
訪問看護の経験がなくても、医療機関における看護等を経験していれば、訪問看護ステーションの管理者になることは可能です。
ただ、実際に管理しながら運営していくので、
- 病棟などの管理者経験がある
- 退院支援看護師の経験がある
- 地域包括支援センターなどで働いた経験がある
- 訪問看護に関する研修を受けたことがある
(訪問看護認定看護師過程、訪問看護研修ステップ1、精神科訪問看護基本療養費算定要件研修、日本財団在宅看護センター 起業家育成事業 等)
などは訪問看護ステーションの管理者として運営していくために有利だと感じます。
訪問看護ステーションを開設する費用
訪問看護ステーションを看護師が開設する場合は、どのような費用がかかり、総額でどれぐらいのお金が必要でしょうか。
相場から、訪問看護ステーションを開設する必要な費用を捻出してみました。
| 会社設立費用 (登記費用等) | 約30万円 |
| 事務所を借りる費用 | 敷金:100万円~500万円 (事務所は賃料の6ヶ月分から12ヶ月分が相場) |
| 事務所の毎月の金額 (6ヶ月分) | 賃料:10万円/月×6ヶ月分 60万円(規模・大きさ・立地による) |
| 事務所の雑費 (自転車や書類・パソコンなど) | 50万~100万円 (人数やものによる) |
| 半年分の人件費(スタッフ3名) | 30万円×3名=90万円 6ヶ月分:540万円 |
| 最低限必要な金額 | 約780万円 |
毎月かかる費用を6ヶ月分としている理由は、始めたばかりは収益を見込むことができないため、半年ぐらいの運転資金を持っていたほうが安定して経営することが出来ます。
融資は受けることが可能ですが自己資金は必要です
看護師が訪問看護ステーションを開業する場合、基本的には「日本政策金融公庫」などの公的機関からの融資を受けて始めるケースがほとんどだと感じます。
融資を受けるにしても、費用を全額負担してくれる融資をくれるほど甘くありませんので、ある程度(100万程度)の自分の資金がないと始めることが出来ません。
働く人材の確保(常勤換算で2.5名以上)
訪問看護ステーションには、保健師・看護師・准看護師を常勤換算で2.5名集める必要があります。
| 管理者 (看護師・保健師) | 常勤1名 |
| 看護職員 (看護師・准看護師・保健師) | 常勤換算で2.5名以上、常勤1名以上必要 (管理者も兼任することが可能) |
| その他職種 (理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等) | 任意 |
※常勤換算とは、常勤の職員を1名とし、半日勤務の非常勤職員は常勤職員0.5人と数えて計算する計算方法です。
ただ、管理者を1名としてカウントすることができるため、管理者を抜いた「1.5名」(常勤1名、週20時間以上の職員1名)がスタッフとして確保することができれば、訪問看護ステーションの基準はクリアすることができます。
訪問看護加算が取れる職種が増えています。特に、精神科訪問看護ステーションを開設する際には、医師の指示があれば、保健師又は看護師が30分以上、複数名訪問した場合に加算が付きます。
そのため、金銭的に余裕があれば作業療法士や看護補助者、精神保健福祉士などを雇用することもお勧めです。
看護師の体験談
それでも、人脈を辿ってなんとか常勤換算2.5を確保することができましたが、一番苦労したそうです。
訪問看護ステーションの事務所を構える

訪問看護ステーションを開設するには、まず法人化する必要があります。
訪問看護ステーションの法人としての種類は、
- NPO法人
- 医療法人
- 社会福祉法人
などが主流です。
私の知人は、「自分色の訪問看護ステーションを創りたい」ことからNPO法人として訪問看護ステーションを立ち上げました。
訪問看護ステーションを開業するためには、「事務所として使用する」目的で場所を確保し「法人名」で電話等を契約することから進める必要があります。
開設支援事業を行っている団体も検討する
最初から自分一人で協力者を集めることはハードルが高い場合には、訪問看護ステーション開業支援事業を行っている団体に問い合わせをすることもお勧めできる方法です。
例えば、
- ケアーズ訪問看護ステーション
- 在宅介護やさしい手
などは、フランチャイズを常に募集しています。
起業のノウハウを受けながら、訪問看護ステーションを開業することができます。
事務所を借りる
訪問看護ステーションは事務所が必要ですが、広さなどの規定はありません。そのため、許可されれば、マンションの一室を事務所として使用することもできます。
もちろん、店舗として貸し出している賃貸スペースも問題ありません。
開設に必要な物品例
事務所として開業するための下記の物品や予め用意する必要があります。
- 電話とFAX
- 携帯電話
- パソコン
- 書類を保管するための鍵がかかる書棚など
- 机や椅子などの事務作業をこなすスペース
- 相談ブース(プライバシーが保てる工夫が必要です)
- トイレと手洗い場所
- 消毒液など
などが必要になります。
また、訪問看護に必要な衛生材料や体温計・血圧計などの医療機器、収納棚なども必要になります。
もちろん、訪問看護に行くための自転車や自動車も必要になります。
訪問看護ステーションの開設申請を行う

訪問看護ステーションを開業する前に、 事務所がある地域を担当する各都道府県もしくは市区町村の窓口に「介護事業者指定申請」を行う必要があります。
事務所の名前や営業時間などを決定する
申請書に、事務所の間取りや連絡先なども書類に記入し申請しなければなりません。
そのため、
- 事業所の名前
- 営業日
- 営業時間
- 訪問看護利用料や実費分の決め事
- 訪問看護ステーションが対応できる業務内容
- 事業実施地域
などを決める必要があります。
これは、指定許可を受ける際に提出する書類の一部に記入する必要がありますので、
- 夜間体制はどうするのか
- 土日祝日はどのように扱い
- 年間休日をどの程度確保するのか
などを考えておくことが大切です。
介護事業者指定申請書類を作成する
各都道府県もしくは市区町村の窓口によって申請書類は異なりますが、大まかには下記のような種類になります。
- 申請書
- 訪問看護事業書の指定に係る記載事項
- 誓約書
- 法人の役員及び管理者の氏名など名簿
- 資産状況
- 勤務表(勤務体制、勤務形態、資格などが判るもの)
- 管理者一覧表
- 関係法令を遵守する旨の誓約書
- 訪問看護ステーション管理者の免許証の写し
- 事業所の平面図と事務所外観・内部の写真
- 法人としての組織・活動を定めた定款
- 運営規定
- 衛生管理上の処置について
- 利用者からの苦情を処理するための対処方法や手順を示したもの
などの書類を提出する必要があります。
そして、書類に不備がなく、申請許可がもらえれば、訪問看護ステーションを開設することができます。
新規事業相談などは、都道府県で研修などを行っていますし、日本訪問看護財団のホームページなどを確認しましょう。
訪問看護に関する書類を作成する

訪問看護サービスの利用者が少ないうちに必要書類等を作成しておきましょう。
利用者向けの書類を作成について
訪問看護を利用してもらうために、患者や家族向けのパンフレットや、訪問看護についての説明用紙、訪問看護の契約書、訪問看護計画書などを準備します。
また、訪問看護を利用した際の請求書や領収書なども必要になります。
看護師の体験談
アセスメント用紙、訪問看護記録・訪問看護計画書など
受持ち患者さんの情報や訪問看護を実施した際の記録を残すために、病棟と同じように看護記録を作成する必要があります。
また、訪問看護を依頼された医師に対して必要となる訪問看護計画書・訪問看護報告書等の書類を作成します。
看護師の体験談
保険請求に関するシステム作り
訪問看護は、介護保険と医療保険で請求額も変わりますし、加算についても疾患によって違いがあります。
そのため、保険請求に関するシステムを作成することが不可欠です。
訪問看護ステーション向けのWEBサポートシステムは、今や売り手市場で、次々と新たなサービスが出てきています。上手にサービスを利用し、事務仕事を簡略化して実務である訪問看護に力を注いていけるように準備します。
利用者が少ないうちに、仕組みを知っておくことが、何よりもお勧めです。
開業後、施設を周知させる(宣伝・広告)

晴れて訪問看護ステーションの立ち上げのめどがついたら、
- 訪問看護を提供する範囲にある病院やクリニック
- 地域包括支援センター
などを訪問し、訪問看護ステーション開業の挨拶周りを行います。
(できれば、事前に訪問したい旨を電話で伝えておることをお勧めします。)
在宅診療クリニックの挨拶まわり
在宅診療を行っているクリニックの場合は、やはり院長と直接会うことをお勧めしたいからです。
院長が診察している時間帯を確認し、訪問時間を調整してください。
病院の挨拶まわり
病院の場合には、地域連携室や相談室を訪問し、パンフレットを置いてもらえるようにお願いします。
病院は、実績がない訪問看護ステーションにすぐにつなげることは少ないですが、顔を知ってもらうことは強みになります。
地域のケアマネジャーとつながる
地域のケアマネジャーさんとつながることもお勧めします。地域のつながりは地域で作ることが利用者の増加につながります。
看護師の体験談
そのため、立ち上げる前からケアマネジャーと繋がりを持っておくことも必要です。
私の友人は営業をかけるために、介護施設や居宅事務所に毎日挨拶回りを行っていました。
【体験談】開設する看護師の苦労

訪問看護ステーションを設立する看護師たちのほとんどは、自身も訪問看護ステーションで働いた経験があり、十分に運営する自信のある人が事務所設立に乗り出します。
しかし、経験があるのは訪問看護の実務だけということが多いのが現状です。
私の友人は、結果的に訪問看護ステーションを廃業する形で終了しました。
失敗した理由を聞くと、
- オーナーからの依頼だったため、資金が潤沢にあるか確認をしなかったこと
- 立ち上げの際に相談できる人がいなかったこと(横の繋がりがなかった)
- 大きい訪問看護ステーションがいくつもあるような地域での開所だったこと
以上のことを上げています。
もちろん、経営が上手くいっている訪問看護ステーションも沢山あります。しかし、一般的に黒字になるまでには2~3年はかかると言われます。
開設する場合に看護師にかかる苦労を説明していきます。
事務所内の業務に意外と手間を取られる
訪問看護ステーションを開設する上では、事務所内にどんな機材を設置するのか、お客さんが来た時にどんなふうに受け入れるのかなど、実際に訪問看護とは関係ない点で頭と身体を使わなければいけません。
事務所のレイアウトなど、ほとんどの看護師の方が未経験ですよね。そのため、こういった雑務や、事務所内の業務に意外と手間を取られるのです。
実際に訪問看護ステーションのオープニングで苦労したという看護師は多いです。
ある看護師は、利用者が事務所に来た時にどうやって応接するのかなどの細かなノウハウは、訪問看護ステーションを開設するための本から学んでいたといいます。書店へ行き、何冊も読んだそうです。
訪問看護ステーションの人材確保の実際
ここでは、人集めをどうやって行なってきたのか、実際に訪問看護ステーションを運営している方たちがやってきた方法をご紹介します。
看護師として働いてきた経験が長いなら、その中で出会った友人や知人に、自分が立ち上げる訪問看護ステーションで働かないかと掛け合ってみるのもいいでしょう。
転職は今日明日でできるものではないので、開設が決まったらすぐに声をかけておくことをお勧めします。
資金繰りに対する苦労
資金が足りなかったり、人手が集まらなかったり、なかなかスムーズに開業することができないと、自身も経済的に苦しくなり、理想の看護というものを忘れかけてしまいそうになります。
苦労する点としては少し観点が違うかもしれませんが、どんな困難な問題があっても、立ち上げ時から開業まで、理想を貫いていくことは簡単なことではありません。
最後に
訪問看護ステーションを開設し、一から自分で立ち上げていく自信がない場合には、共同での開設や、フランチャイズとして訪問看護ステーションを立ち上げることを視野に入れましょう。
自由度は減少する面もありますが、準備から開業後のサポートがあります。
また、新規訪問看護ステーション立ち上げを行う医療機関や福祉施設などに管理者候補として入職するなどで経験を積む方法もあります。
是非、自分のお城を目指して、頑張ってください!


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