私は大学病院に勤務していた頃、偶然、結核病棟に異動となりました。
看護師は医療知識のある分、感染症や隔離病棟と聞くと不安になると思いますが、看護師として結核に関わったという経験は、私の看護師人生にプラスになっていると思います。
結核病棟で働いた経験を元に、仕事内容と働いて感じたことを説明していきます。
看護師の仕事内容

画像:shutterstock
結核病棟で働く看護師の主な仕事(業務)は内服管理で、入院治療が必要な結核と診断された患者の看護を担当します。
結核患者は、通常3〜4種類の薬剤を組み合わせて、早くても3か月間、長い患者だと6か月以上、陰圧空間の感染管理のされた隔離病棟での治療となります。医師の治療下にて服薬治療を適確かつ確実に行う上で、患者のケアは看護師としてとても重要な仕事であり役割となります。
以下で1日のスケジュールと、他の病棟にはない特有の仕事内容を説明していきます。
看護師1日のスケジュール例
結核病棟で働く看護師の1日のスケジュール例は以下の通りです。
| 8:00 | 申し送り・受け持ち患者へ挨拶、ラウンド 環境整備 |
| 9:00 | 配薬および内服チェック (自己管理をしている患者の内服後の確認) |
| 10:00 | 点滴治療のある患者への輸液開始 |
| 10:30 | 深夜帯でバイタルサインの異常がある患者への再検査 異常の患者は医師へ報告し指示を仰ぐ |
| 11:00 | バルーンカテーテル入れ替え |
| 12:00 | 配膳 |
| 12:15 | 昼休みor食事介助 |
| 13:15 | 食事量の確認と配薬および内服チェック |
| 13:30 | バイタルサイン |
| 14:00 | カンファレンス (医師合同1回/週、ナースのみ毎日) |
| 15:00 | 配薬セット(1回/週) |
| 15:30 | ラウンド、物品の補充、環境整備 |
| 15:45 | 申し送り |
| 16:00 | 記録(電子カルテへの入力) |
| 16:45 | 終了 |
働く病院により異なりますが、大体のイメージを掴んでいただけると幸いです。
病棟勤務の看護師とスケジュールは、さほど変わりありません。
患者の全身状態の観察
患者の中には既往歴や入院中の他疾患の発症等から手術となるケースもあるため、看護師として患者の全身状態の観察がとても重要な仕事となります。
また、入院中に気胸を併発したケースもあるため、隔離病棟でのモニターおよびドレーン管理は、通常よりも充分な観察をすることが必要です。結核病棟には、結核治療を目的に様々な患者が入院するため、スタンダードプリコーションを基に一般的な看護知識や技術も多く必要となる科になります。
患者への精神的なケア
結核患者は隔離という精神的なダメージも大きく、不安を抱きやすいため患者への精神的なケアも大事な仕事です。
多種多様の患者と関わるため、やはりコミュニケーションスキルが必要になり、大切な看護師の仕事となります。
医師への迅速な報告
結核病棟で働く看護師は、医師への迅速な報告を行う仕事がとても重要となり、特に薬の副作用が疑われる場合はすぐに報告しなければなりません。
高齢患者の場合、認知症予防の視点や少しでも入院生活の苦痛を軽減する関わりが看護師として求められます。
結核病棟は、隔離病棟であるためナースコールで看護師が呼ばれると「N95マスク」を付けたり外したりしながらの移動を繰り返し行うことが必要です。

画像:「N95マスク」ウィキペディアより
働いて感じたこと

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私が結核病棟で働き感じたことを説明していきます。結核病棟へ異動や転職を考えている看護師の方は参考にしてみてください。
比較的自分のペースで仕事を遂行できる
結核病棟では入院期間が長期にわたるため、急性期病棟と比較し急変等がない場合、バタバタせず自分のペースで仕事を行うことが出来ました。
薬の内容も副作用がない場合は、医師の指示が毎日変更されることはないのが通常であり、その分、自分の気持ちにも余裕を持って患者への対応やケアを行うことが出来ました。
N95マスクは不自由が多い

画像:「N95マスク」ウィキペディアより
感染のため隔離病棟に入室する際、自分の感染予防のためN95マスクを着用しての看護となり、しばらく装着しているととても息苦しいことが多かったです。
患者と話をする際は、マスクをしていることで「何をしゃべっているのか分からない」と言われることが多いため、内容がきちんと伝わるようにゆっくり話すことを心がけなければいけませんでした。
患者は長期の入院が多い
例えば、入退院が頻繁にある急性期の病棟に比べると、結核病棟は緊急の手術や入院がない限り患者の多くが長期の入院となります。
そのため、結核病棟は比較的のんびりと時間が経過し、患者の顔と名前や性格などのキャラクター、家族背景を覚えやすく、入院までの生活のことや退院後の生活について語る患者の話を聞くのが楽しかったです。
また、患者の退院決定検査の際に先生から退院日決定の話があると、退院が決まったことを患者が嬉しそうに話してくれるので、看護師としてもやりがいがありました。
落ち込む患者も多かった
看護師は、患者と1番身近に接する機会の多く、患者が現状を受け入れて前向きに捉えられる時を待つことが辛かったです。長期隔離病棟に入院している患者の中には、家族に会えない悲しみや仕事が出来ない苦しみ等を拭いきれない人もいました。
また、病気であることが判明した日から、今までいた社会と急に隔離された空間に、とまどいや苛立ちを感じる患者もいました。
看護業務の時に、毎日挨拶をする患者が落ち込んだ表情でいる時は、今の気持ちや話を傾聴することしかできないもどかしさがあります。
最後に
私は大学病院を退職後、企業で看護師として勤務しました。
その頃、社員が結核を罹った際に保健所との連携や治療の知識があったため、他の結核に関わったことのない看護師や部署から頼りにされることがありました。
偶然、大学病院にて配属された部署でしたが、結核病棟で働いていた経験があったからこそ活かすことができました。
看護師としてのどんな経験も、将来へつながるための貴重な時間だと私は考えます。
この記事を通して、結核病棟で働く看護師のイメージの1つとして、転職活動の参考にしてみて下さい。


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