機能訓練指導員は、病院で働いていると耳にすることがないですが、介護の現場では近年とても増えている職種です。機能訓練といっても病院で理学療法士や作業療法士が行うリハビリとは違い、他の職種でも機能訓練指導員として働くことができます。
私は現在パワーマシンを使ってリハビリを行う通所介護(デイサービス)にて看護師兼、機能訓練指導員として働いています。
機能訓練指導員として看護師と兼務した実態を、私の体験から説明していきます。
機能訓練指導員について
機能訓練指導員とは、介護保険法によって定められた役割の1つで、病気、怪我、加齢などで、日常生活に支障がある利用者が自立した生活を送れるよう、状態に合わせて機能訓練を行い支援していく指導員です。(定義:日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者。)
主に、介護施設や通所介護(デイサービス)の利用者のサポートを行う仕事です。
初めての方のために看護師目線で「機能訓練指導員」を説明していきます。
機能訓練指導員という資格はない
機能訓練指導員という資格はなく、その「役割」を意味します。
しかし、資格がないと言っても誰でも機能訓練指導員として働けれる訳ではなく、「機能訓練指導員として認められる資格」が存在します。
その資格は、
- 看護職(看護師または准看護師)
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- あん摩マッサージ指圧師
- 柔道整復師
- 鍼灸師(平成30年から)
以上の通りとなります。
配置が義務付けられている
機能訓練指導員は特別養護老人ホーム、通所介護(デイサービス・ショートステイ)に必ず1名以上配置することが義務付けられています。
そのため、機能訓練指導員という役割が存在します。
また、施設において看護職員(看護師・准看護師)は「サービス提供時間帯を通じての配置」までは求められていないため、機能訓練指導員としても従事すること(兼務すること)が可能となっており、機能訓練業務の多くに看護職員が携わっていることが現状となります。
機能訓練指導員は看護師資格保有者が65.6%と多い
2016年に厚生労働省が行った調査結果によると、通所介護(デイサービス)の機能訓練指導員の資格は、
- 看護職員(看護師・准看護師):65.6%
- 理学療法士:11.5%
- 柔道整復師:10.7%
- 作業療法士:6.1%
となっており、看護職員(看護師・准看護師)が機能訓練指導員を行うケースが多いと言えます。
さらに、機能訓練指導員の職務に専従している割合は全体の34.2%となり、約半分以上の看護師は、看護師職と機能訓練指導員を兼務していることになります。
(参照)リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査研究
機能訓練指導員の知識がなくても出来るの?
私も実際そうでしたが、機能訓練指導員として働く前に、機能訓練についての経験はなく知識も全くありませんでした。
そのため、働く職場にもよりますが、機能訓練指導員の知識や経験がなくても学んで仕事にしていく努力を行えば看護師として働くことが可能だと言えます。
看護師が機能訓練指導員として働くためには?
看護師資格、又は准看護師資格を保有している場合、看護師が機能訓練指導員として働く条件は1つとなります。
- 鍼灸師以外の機能訓練指導員が在籍する施設にて半年以上の実務経験を積むこと(平成30年の改正より)
が条件として定められています。
そのため、看護師として「機能訓練指導員」が在籍する施設で働くこと、その際に「機能訓練指導員」の候補として実務経験を積むことが求められます。
具体的に初めて働くためには
具体的には、転職の際に、
- 機能訓練指導員が在籍する通所介護(デイサービス)に就職すること
- 出来れば、機能訓練指導員の候補を探している職場を選ぶこと
- 出来なければ、面接時に機能訓練指導員として将来的に働きたい旨を伝えること
などが有効です。
機能訓練指導員として働く近道となります。
機能訓練指導員の仕事内容
機能訓練指導員とは利用者の心身の状態や社会的背景、家族の意向などから現在の生活を支援していくために、どのような訓練が必要なのかを考え、計画表を作成し、それらに沿って機能訓練を行います。
私が思う、看護師が機能訓練指導員と兼務する仕事として大切なことは、「利用者の身体の状況をきちんと把握して計画を立てて行う」ということです。
機能訓練指導員の仕事内容としては、
- 体力測定の実施
- 個別リハビリの実施、グループリハビリのメニュー考案など
- 機能訓練計画表の作成と評価(個別機能訓練加算計画書・運動器機能向上計画書など)
- リハビリ機器利用時の介助、指導
- 各スタッフへ機能訓練内容の指導
などがあります。その他、看護師として利用者へのバイタルチェックの実施や体調管理なども行います。
以下で、仕事内容について詳しく説明していきます。
利用者の体調管理、緊急時の対応、疾患や療養上の相談
機能訓練指導員と看護師を兼務した場合、看護師としての仕事も求められることが一般的です。
朝にバイタルサインを測定しながらその日の体調を確認し、リハビリや入浴の可否判断も行います。利用者からは、看護師として見られる場合が多く、病気のことや受診の相談などもされることが多いことが実情です。
体力測定・機能訓練の評価・機能訓練計画書の作成
私が勤務していた職場では、利用者に対し、握力や5メートル歩行、開眼片足立ち、ファンクショナルリーチ、等の基本的な体力測定を行っていました。
体力測定の結果を元に、「どのような機能訓練をして行くのか」機能訓練計画書を作成していきます。
また後に、機能訓練を実践し、そして再び評価するために改めて体力測定を行います。
カウンセリングと目標の設定
利用者に対して機能訓練指導員がカウンセリングを行い、個別の機能訓練計画書を作成します。
例えば、普段どんな生活を送っているのか、好きなことは何か、等の世間話のような気楽な感じで話を進め「前のように料理をしたい」「庭仕事をしたい」「近くのコンビニへ歩いて行けるようになりたい」など行いたいことを聞き出していきます。
料理であれば、作業療法や生活リハビリ、立位保持訓練など、自宅のキッチンの環境も考えて、歩行ならば、コンビニまでの距離は何メートルか、段差の訓練は必要かなどを盛り込んで、具体的に訓練計画として作成していきます。
一緒に目標を立て、その目標が達成できるような機能訓練を行う計画書を作成し、利用者に同意してもらうことも機能訓練指導員の仕事となります。
機能訓練メニューの作成・実施
機能訓練計画書に沿って、メニューを作成し実施します。
目標に合わせて、歩行訓練、関節可動域訓練、トレーニングマシンを利用したパワーリハビリなどの方法や、時間を設定して行っていきます。
例えば、歩けることを目標にする場合には、筋力の低下が原因なのか、バランス問題か、麻痺など疾患からきているものなのか、などを踏まえて訓練を実施するようにします。
また、できるだけ楽しく訓練できるよう、笑顔で声掛けを行い、雑談をしながら実施することも大切な仕事です。
モニタリング・計画書を作成しケアマネジャーへ提出
介護報酬の加算の取り方で、集団訓練を行うのか個別訓練を行うのかなどの違いがあり、機能訓練指導員はその施設に合わせて訓練メニューを作成します。
例えば、要支援の利用者は自立へ向けてのより具体的な1か月ごとの目標と3か月目標を立て、毎月評価します。今月はバイク5分、翌月は7分、翌々月は10分、というように作成し、評価、修正を行っていきます。
要介護の利用者は維持や向上を目的とした3か月目標を立てそれに沿ったメニューと評価をします。
これらを月末にモニタリングし、計画書ケアマネジャーへと提出します。
看護師と機能訓練指導員を兼務して感じたこと
私が通所介護(デイサービス)で、看護師と機能訓練指導員を兼務して感じたメリット・デメリットをお伝えしてきます。
勉強しなければ機能訓練の専門家ではないということ
機能訓練指導員は、機能を回復させるリハビリとは違い、今ある機能を継続させるための訓練を支援する仕事ですが、初めて看護師として機能訓練指導員を目指す場合、理学療法士や作業療法士とは違い「看護師は機能訓練の専門家ではない」ということです。
私が初めて機能訓練指導員になった際には、
- 「正しい行い方なのか」
- 「対象者にはどのような機能訓練の必要性があるのか」
など分からないことが多く苦労しました。
そのため、継続的な勉強や経験値が必要な仕事だと言えます。
利用者の体調を把握しながら機能訓練を行えること
看護師が機能訓練指導員と兼務した場合、対象者を理解しながら、その日の体調に合わせて内容を調節することや変更しながら機能訓練を行うことができます。
そのため、健康状態をアセスメントし機能訓練に反映させることが、他の資格職にはない看護師特有のメリットだと感じました。
利用者の健康相談も受けることができる
利用者が病気や身体のことについての相談をされることも実際に多く、相談を受けることができます。そのため、看護師が兼務することで気軽に病気や身体のことについて相談できる場にもなります。
利用者が誰に相談すれば良いのかわからないという悩みを持っている方も多かったです。
仕事量は増加すること
機能訓練指導員と兼務になるので、仕事量も当然多くなります。
兼用することで給料が上がる場合もある
働く施設によって異なると思いますが、看護師と機能訓練指導員を兼務することで給料が私はアップしました。
しかし、兼務していても給与面で上乗せされるということはなく、一般的な日勤勤務の看護師の給料の場合がほとんどだと聞きます。
他職種との意見交換が出来きたこと
通所介護(デイサービス)の場合、1施設に機能訓練指導員は最低1人の配置ですが、私の場合、会社がいくつかの施設を運営しており、他のリハビリ特化型デイサービスには理学療法士や柔道整復師の方も在籍していたため、機能訓練については協力し合いました。
他にもケアマネジャーや相談員など他職種との連携や意見を聞くのはとても新鮮で、知識の幅が広がったことや今までとは違った視点からも物事を考えられるようになったことは、看護師として、機能訓練指導員として大きなメリットだと感じています。
最後に
高齢化社会の中、機能訓練指導員という仕事の需要は、ますます高まることが予想されます。
機能訓練指導員は、「利用者の機能を継続させ、少しでも現在の生活を長く送れるように支援する」という仕事はとてもやりがいがあると私は感じます。
また、看護師が兼務することで対象者も安心して機能訓練を行なうことや、身体のことについての悩みを相談すること、今までの経験や知識を活かして行うことが可能となります。
看護師としての資格があり、経験を積むことで誰でも行うことができる仕事なため、興味がある人は行動に移してみてください。
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