虐待の種類には、ネグレクト・精神的虐待・性的虐待・ミュンヒハウゼン症候群などがあります。虐待を受けた子どもたちは、大人になってもアダルトチルドレンや共依存を起こし、苦しみながら生活していくことになります。
虐待は、早期発見し早期対処することが大切です。
もしも病棟で看護師が虐待を受けている小児患者と出会ったらどのように支えていけばよいのでしょうか。当ページでは身体的虐待を受けていた小児患者を例に、チェックポイントや対処法などを説明します。
虐待を受けている小児患者のチェックポイント
身体的虐待を受けている場合は、身体のあざや成長の遅れなどがあり、わかりやすいです。しかし、虐待を受けている小児患者は別の方法でもSOSを出しています。
ここでは、虐待を疑うチェックポイントを2つ、具体的な特徴とあわせて紹介します。
:親が来ると表情が硬くなり笑わなくなる
最初は緊張や人見知りなど、入院中の小児患者は看護師に対して心が開けません。しかし、看護師の歩み寄りにより徐々に病棟の環境に慣れ、笑顔を見せ、遊ぶことができるようになります。
しかし面会時間に親が来て、小児患者が以下のような行動や態度を表したときは虐待を疑いましょう。
- 親が来ると表情が暗くなる、硬くなる
- 遊ぶのをやめる
- 正座など姿勢を正す
- 親が帰る時にも特にさみしがる様子がない
もちろん、こうした行動が必ず虐待されていることに繋がるとは限りません。慎重に小児患者の様子を確認しましょう。
ポイント!
虐待を受けている子どもは、いつまた虐待を受けるのか、神経を尖らせながら生活するのです。そのため、親の前では波風を立てないようにおとなしくしているのです。
:ふいに大きな音が鳴ると必要以上に驚く
虐待を受けている小児患者は、食器が落ちるなどの大きな音がすると異常なまでに驚いたり、耳をふさいで頭を横に振りだしり、身体を大きく動かしたりする反応を見せます。
花火などの大きな音にも反応を見せることもあります。
恐怖がよみがえるため身体が必要以上に動く
本人が身体的虐待を受けている間に物が割れる音や、きょうだいが虐待を受けているときには叩かれて倒れる音が聞こえます。大きな音がするときには、そのときの恐怖がよみがえる(フィードバック)ために身体が必要以上に動いてしまうのです。
虐待を受けている小児患者を見つけた時の対処法
病院によっては、院内に虐待対策委員会などが設置されているところもあります。
看護師が虐待を受けている小児患者を発見した時の対処法について、看護師ひとりで対応するのではなく、師長・医師などに相談し、チームで関わるようにしましょう。
帰宅可能な怪我でも医師と相談して1度入院させることが必要
一見すると通常のケガなどで病院に来院した小児患者でも、虐待が疑われるあざが見られることがあります。その際、来院する原因となった怪我自体が自宅で様子を見ても良い怪我だとしても、医師と相談して1度入院させることが必要です。
虐待を疑い、一度入院させるというのは「一時保護入院」と言います。
ポイント!
一時保護入院について、以前は病院の判断で行うこともありましたが、今は児童相談所との相談が必要です。
虐待の疑いが強ければ児童相談所へ連絡をする
一時保護入院や通常のケガでの入院中の検査や家族と面談した結果、虐待の疑いが強い物であれば、児童相談所に連絡してください。
この場合、小児患者本人が虐待を受けていると言わなくても児童相談所への連絡は必須です。
看護師が虐待を受けている小児患者と接するポイント
看護師が虐待を受けている小児患者と接するときには「無理に虐待のことを聞き出さない」ということがポイントです。小児患者本人から話を聞いて少しでも痛みを分かってあげたいと考える看護師もいるでしょう。
しかし、虐待を受けている小児患者は簡単に虐待されているとは言えないのです。
治療をする場合は医師と連動しながら少しずつ進める
小児患者が虐待の話をする時には、その時の暴力や恐怖を思い出します。虐待を受けている小児患者と接する時は、必ず小児科の医師や心療内科の医師などと連携しながら、少しずつ治療をすすめていくようにします。
ポイント!
身体的虐待を受けていて、身体に皮下出血がある小児患者は虐待についての話をしてくれません。身体を拭いているときに、「このあざ、どうしたの。」と聞いても、「どこかで打った。」などと答えます。
看護師が虐待をしている親と接する時のポイント
虐待をしている親と接する時のポイントとしては、「問い詰めない」ことです。虐待していることを認めたくない親は、虐待の有無を問い詰めると逆上します。逆上してしまう親の場合、虐待がエスカレートする可能性もあるのです。
虐待をしている親に寄り添う姿勢をみせる
虐待している親も何かしらの問題を抱えています。虐待をする理由を真っ向から否定しないことです。看護師として、虐待している親に寄り添う姿勢をみせ、まずは肯定から入り、少しずつ悪い点などを指摘していくようにしましょう。
虐待をしている親の発言などを看護記録に残すと良い
虐待を受けている小児患者の母親や父親の話のずれなどから虐待の事実がわかることがあります。虐待をしている親との面談や会話の内容は詳しく看護記録に残すことが重要です。
ポイント!
虐待をしている親は、実はその親から虐待を受けていたという「負の連鎖」を背負っているケースもあります。親も苦しんでいるのです。
まとめ
虐待を受けている小児患者の看護で大切なことは、「虐待を受けていることに看護師が早く気づくこと」です。身体的虐待を受けている子どもの観察ポイントは、親に対する子どもの反応や音におびえている様子などから察知することができます。
虐待をしている親と接するときには、虐待を問い詰めることはせず、そうせざるを得なかった親の心に寄り添ってみましょう。
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