小児1型糖尿病患者の看護(注意点・看護計画)

小児1型糖尿病とは、インスリン分泌の機能低下により体外からインスリンを投与されなければ生命を維持できない病気のことで、別名IDDMとも呼ばれています。

学校検診で発見されるケースもあり、周囲からはなかなか気づかれにくい病気です。

また、感染やストレスが引き金となって急速に発症する自己免疫異常の1つでもあります。

この記事では、小児1型糖尿病患児についての看護をご紹介します。

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小児1型糖尿病の看護計画

小児1型糖尿病の看護計画

小児1型糖尿病の看護計画については、以下の3つの問題点が挙げられます。

  • 小児1型糖尿病の症状とその管理に対する知識不足
  • 代謝異常による体液量の喪失
  • 入院や今後の生活

それぞれ立案した内容についてご紹介します。

小児1型糖尿病の症状とその管理に対する知識不足

看護診断疾患による症状とその管理に対する知識不足に関連した非効果的自己健康管理
看護目標・疾患による症状やその管理について理解することができる
・自己管理を継続することができる
OP
(観察項目)
1.小児1型糖尿病についての理解度(子どもと家族)
・病気の原因や病態について
・昏睡前駆症状について
・昏睡状態の有無
・低血糖症状について
2.治療についての理解と受け入れているか確認
(子どもと家族)
3.活気や機嫌の有無
TP
(ケア項目)
1.インスリン注射の管理
2.子どもの成長・発達を見ながら指導内容を修正
EP
(教育・指導項目)
幼児期
1.インスリン注射やアルコール綿花での消毒が可能であれば指導
2.インスリン注射・血糖測定のチェックリストを作成
(達成できたらご褒美シールを貼る)
3.症状が起こっているときの感覚を確認し覚えてもらう
(低血糖症状を自覚することは難しいため)
4.病気・感染症予防の理解については、絵本などを活用して説明
学童期
1.インスリン注射・血糖・尿糖・ケトン体等測定の自己実施の指導
2.低血糖症状を自覚した上で、自己対処の指導
3.低血糖症状出現時は、早急な対処の指導
4.糖尿病カードと低血糖時の補助食は常に携帯するように指導
5.食事を選ぶ際、簡単にカロリー計算できるよう指導
6.病気・感染症予防・合併症について、パンフレット等を活用して説明
7.学校生活における注意点を理解できるよう指導
・体育の授業やクラブ活動前の低血糖予防
・修学旅行やキャンプなどの宿泊時
・インスリン注射を行う所/時間/保管場所
思春期
1.保護者から確認される前に、忘れず自己測定できるよう指導
2.進学・就職・結婚について社会で活躍している人を参考指導

代謝異常による体液量の喪失

看護診断代謝異常による体液量の喪失に関連した体液量不足
看護目標糖尿病性ケトアシドーシスによる症状が出現しない
OP
(観察項目)
1.口渇の有無/飲水量測定
2.排尿状況
・尿回数・量
・尿ケトン体・比重・尿糖・pH
3.皮膚の状態
4.食事摂取量
・嗜好の有無
・空腹感の有無
5.体重測定(毎日)
・日頃の体重との比較
・入院時との比較
・前日との比較
6.水分出納
7.採血データ
・HbA1c
・血糖
・血中ケトン体
・電解質バランス
・OGTT
・総コレステロール
・中性脂肪など
8.昏睡前駆症状のチェック
・口渇
・頭痛
・嘔気
・嘔吐
・腹痛
・全身倦怠感の有無など
9.昏睡状態の有無
・バイタルサイン(頻脈・徐脈)
・意識レベル
・クスマウル大呼吸
・アシドーシス
・脱水など
10.活気・機嫌・全身倦怠感の有無
11.低血糖症状の有無
・空腹感
・発汗
・けいれん
・全身倦怠感
・嗜眠傾向など
TP
(ケア項目)
1.点滴の管理
・点滴刺入部のテープ交換
・ルート交換
2.インスリン注射の管理
3.高血糖時の対応
・インスリン投与
4.低血糖時の対応
・看護師が保管している糖質補給食の中から選んでもらう
(幼児期・学童期・思春期)
・ブドウ糖投与
5.日常生活の援助
6.急変時の準備・対応
7.環境整備
EP
(教育・指導項目)
幼児期
・治療の必要性・病気について、絵本や紙芝居などを活用して説明
学童期・思春期
・治療の必要性・病気について、パンフレットなどを活用して説明
幼児期・学童期・思春期
・低血糖・高血糖症状が現れたら、看護師に伝えるよう指導

入院や今後の生活

看護診断入院や今後の生活に関連した不安
看護目標子どもとその家族の不安が「軽減した」と発言できる
OP
(観察項目)
1.治療や病気の受け止め方
2.表情・言動
3.協力者の有無
4.友人の言動
5.本人・家族の生活パターン
TP
(ケア項目)
1.注射や血糖測定の手技について自信がつくまで繰り返す
2.「できた」ことに共感し、認める
3.本人や家族の不安を受け止める
EP
(教育・指導項目)
幼児期・学童期・思春期・家族
1.糖尿病患者会やサマーキャンプを紹介
2.入院中・退院後の生活スケジュールを立てる
(看護師・家族とともに)
3.いつでも看護師に相談できることを伝える
学童期・思春期・保護者
1.シックデイへの対処法について説明する
保護者
1.栄養士から食事について説明してもらう
(保護者が食事の準備をするため)
・食事内容や調理法の指導(食品交換表を参考)
・子どもが興味を持つように楽しみながら一緒に料理する
2.保護者にも注射の手技を説明し、見学・実施してもらう
・看護師が実施しているところを見学
→モデル人形に保護者が実施
→保護者が子どもに実施
→子どもが実施しているところを見学
(可能であれば保護者自身で注射・血糖測定を行ってもらう)
3.低血糖出現時にはグルカゴン注射を実施できるよう指導
(ブドウ糖の摂取を促す)
4.家族内で、誰が何に協力できるか話し合うよう指導
5.過保護にならないよう助言

小児1型糖尿病患者の看護の注意点

小児1型糖尿病患者の看護の注意点

小児1型糖尿病は治癒することなく、一生付き合っていかなければならない病気です。だからこそ、看護師は「子どもが自己管理できる」ように指導する必要があります。

ここでは小児1型糖尿病患者の看護の注意点として、以下の4つを紹介します。

  • シックデイの対応が重要
  • 自己注射は無理矢理させない
  • 保護者が過保護にならないように注意する
  • 血糖コントロールがつくまで定期的に血糖測定を行う

それぞれの内容と対処法について説明していきます。

シックデイへの対応の重要性について伝えること

シックデイとは糖尿病を持ちながら、それ以外の病気にかかってしまったときのことを指します。子どもは感染症に罹患しやすいため、シックデイへの対応は非常に重要です。

まずは、近くの小児科でかかりつけ医を決めて、病気になったらすぐに受診するようにしましょう。病気になると食事の摂取量が低下しがちですが、インスリンは必ず注射するようにし、間食でエネルギーを補いましょう

注意点!

注意点

シックデイは、風邪程度の病気でも血糖コントロールが不安定になり、糖尿病が悪化するため注意する必要があります。

自己注射は無理矢理やらせないこと

大人でも自分の身体に注射を刺すというのは躊躇するものです。子どもの場合、1度できたとしても次からスムーズにできるとは限りません。

子どもが「やりたくない」と言った場合には、無理矢理やらせるのではなく、まずその理由を聞いてから看護師が実施しましょう。

ただし、次は子どもが実施するといった約束をして、同じことを繰り返さないようにすることも大切です。

ポイント!

ポイント

「自分で頑張ってできるような工夫」も必要です。ご褒美シールを一緒に作成したり、手作りの印鑑を押したりしながらその子の頑張りをねぎらうようにしましょう。

保護者が過保護にならないよう注意すること

保護者は、子どもが病気だとかわいそうに感じて過保護にしてしまうことがあります。

保護者が、子供に対して過保護にならないようにするための対処法として、看護師が病気や治療の必要性・方針について話し、できることは子どもに任せて見守ることができるようにサポートすることが挙げられます。

ポイント!

ポイント
看護師はその際に、「子どもが辛いとき、保護者はもっと辛い」という気持ちを受け入れるようにしましょう。看護師自身も自己注射を実施して、その怖さや痛さを知ることもおすすめです。

血糖コントロールがつくまで定期的に血糖測定を行うこと

血糖コントロールがつくまでは、定期的に血糖測定を行うことや子どもの症状を見て異常の早期発見につとめましましょう。

なぜなら、インスリンによる治療が開始すると、それに伴い低血糖を起こすことがあるからです。

注意点!

注意点
低血糖症状には、「空腹感・生あくび・手の振戦・冷汗・顔面蒼白・倦怠感」などがありますが、重症化するとけいれんや意識障害を起こすことがあるため、注意が必要です。

まとめ

小児1型糖尿病患児の症状としては、高血糖・ケトアシドーシス・低血糖症状に注意することが必要です。

また、看護計画のポイントとしては、入院初期・血糖コントロール中に急変する可能性を考えて立案し、子どもと家族の知識を補いながら「自立」を促すように介入しましょう。

子どもが自己管理できるようにするためには、シックデイの対応や自己注射を無理矢理させないこと、過保護にしないことに注意し、「自律」できるような関わりができるように、将来を見据えた看護を行えるようにしましょう。

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