小児喘息患者の看護(症状・原因・看護計画・注意点・スキル)について

現在、小児科の入院患者の半数は喘息による呼吸症状の急性悪化によるものになっているのが実情です。また、アレルギー疾患を持つ小児が生活環境の変化とともに増えてきていることもあり、今後も小児喘息の患者の数は増えていくことが予想されます。

この記事では、小児喘息の看護について詳しく説明していきます。

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小児喘息患者の症状について

小児喘息患者の症状について

小児の病気の中でも、比較的多くみられる小児喘息は、下記の通り、

  • 症状は軽症のものから入院が必要な重症のものまである
  • 症状の感じ方や現れ方もさまざまで個人差がある

そのため、特に小児喘息と診断されていない小児の症状が軽症の場合は見逃してしまうこともあります。

小児喘息の患者の症状の特徴について

小児喘息では喘鳴の症状が強く出ることが多いです。その他具体的に小児喘息の症状を挙げます。

  • 呼吸のしづらさや呼吸の苦しさ
  • ぜこぜことした咳、止まらない咳
  • 口唇や指先が冷たく青白くな
  • SpO2の低下
  • 呼吸のときにヒュー、ヒューと変な音(喘鳴)がする

これらの症状がみられると、何らかの原因により気管支が炎症を起こして狭くなり、そのために空気が通りにくくなっている状態が予測できます。

小児喘息なのか風邪なのか判断する方法

風邪のとき、小児が引き始めに喘鳴が聞こえることはありますが、実際に小児喘息と判断することは難しいです。そのため、

  • 風邪が治っても喘鳴が聞こえる
  • 運動などで体を使ったりすると喘鳴が聞こえる
  • 運動後にも喘鳴や咳が止まらない

上記のようなケースがみられる時は小児喘息を疑うことが良いでしょう。

危険を要する重度の小児喘息発作の症状について

発作が重くなり、身体に必要な酸素量が呼吸で得られなくなってくると、

  • 手足が冷たい
  • 横になっていられない
  • 会話ができない
  • 胸の辺りが呼吸と共に陥没する

といった症状が現れ、最悪の場合身体に必要な酸素が不足し呼吸不全から死に至ることもあります。

年齢により小児喘息の症状のアセスメントは異なる

小児喘息で難しいところは年齢により症状の現れ方、訴え方が異なるところです。会話ができる年齢であれば、息苦しさを訴えることができ、それ以外の症状があれば言葉にして伝えることができます。しかし会話ができない乳児、幼児は息苦しさを訴えることができないのです。

乳児・幼児は客観的な視点とアセスメントが求められる

言葉で喘息の症状を訴えられない小児に対しては、必ず全身の観察をします。目で見て確認する項目は、

  • 元気があるかないか
  • 胸の陥没
  • 呼吸回数や呼吸の仕方
  • 酸素飽和度
  • 口唇や爪のチアノーゼの有無
  • 自分で姿勢が維持できる年齢であればどのような姿勢をとっているのか

などを観察していきます。たとえ言葉で訴えられなくても、発作を起こしているときには身体そのものが苦しさを訴えているのがみえてきます。

補足説明!

補足事項

観察の結果、小児喘息と判断された乳児や幼児には、さらに末梢冷感の確認や聴診もおこないます

喘息症状に慣れてしまう小児もいる

年齢に限らず元々小児喘息だと診断されている小児の場合は、喘息症状に身体が慣れてしまっていることがあります。例えば、

  • 明らかな喘息症状がみられない
  • 本人からの喘息の訴えがないが体調不良を訴えている

上記該当する場合には、発作の可能性を考えて全身の観察、アセスメントをおこなうことが大切です。

小児の酸素飽和度に注意が必要

よく見られるのは、酸素飽和度が90%前後であっても苦しいという訴えがないというものです。パルスオキシメーターで測定された値が90%の場合、動脈血の酸素飽和度は60%です。この動脈血の酸素飽和度ですが、

  • 動脈血の酸素飽和度90%から60%まで:緩やかに低下
  • 動脈血の酸素飽和度60%を切る:急激に低下

というように低下する変化が異なります。動脈血の酸素飽和度が急激に低下するとさっきまで元気そうに見えた小児が急に呼吸不全に陥る恐れもあるのです。

小児喘息の原因について

小児喘息の原因について

喘息は年齢に問わず、遺伝的要因が強いのですが、その他の原因としてはアレルゲンを吸い込むことで起こるアレルギー反応という事がわかってきました。つまり、

  • ダニ
  • ホコリ
  • カビ
  • ハウスダスト
  • ペットの毛

などを吸い込むことで発症する可能性が高いということです。

気圧の変化で小児喘息が誘発される場合もある

台風や雨、または梅雨の時期等にその気圧の変化を過敏に感じ取って気管支の炎症が起こることもあります。このように、気圧の変化で喘息が誘発されることを起動過敏性と呼びます。

ポイント!

ポイント

アトピー体質の小児も喘息発作を起こしやすいとされ、実際に小児の喘息患者のほとんどはアトピー体質だと意見も多いです。

小児喘息の患者で看護師が注意する症状

小児喘息の患者で看護師が注意する症状

明らかな喘息発作とわかる症状であれば、すぐに対処することができます。しかし、入院中の小児の場合は、看護師の判断だけでは対応が難しい場面も多々あります。そこで、これから看護師が注意するべき小児喘息患者の症状について説明します。

小児喘息患者の体調に少しでもいつもと異なる症状が出ている

小児喘息患者には、息苦しい状態への対応方法がわからないため、苦しいはずなのに平気で歩きまわっていたり、苦しくて泣いてしまい、泣くことで苦しさが増し悪循環に陥ることがあります。そのため、

  • 約束指示を使用しても治らない
  • 泣き止まない
  • 眠れない
  • 抱っこを好み起座呼吸になる
  • 咳き込んで嘔吐する

という症状がある場合は、酸素飽和度などの客観的な数値に関係なく医師に報告、または指示をもらっておくと安心です。

小児と大人では喘息発作が違うことを理解することが大事

入院・外来に関わらず、忘れてはならないのが小児の喘息発作は大人よりも急に悪化することがあることです。自分で歩行ができていた数分後に、呼吸不全で倒れるということもあります。なぜなら、小児は大人よりも喘息発作に対して強い傾向があるからです。

呼吸状態の悪化症状があればドクターコールが必要

小児喘息患者の体調の異常は、大人の感覚よりもやや重度であればアセスメントし、早めの行動をすることが重要です。具体的な症状として、

  • 陥没呼吸
  • 喘鳴が激しくなる
  • 意識障害

などの症状がみられた場合にはドクターコールをし、万が一の場合に救命処置をすぐにおこなえるよう準備をしなくてはなりません。

息を吐くことができないという症状

喘息というのは気管支が狭くなり、肺から空気を吐き出しにくくなるものです。肺の空気が吐ききれないと、十分な酸素を身体に取り込めず症状は悪化します。そのため、会話のできる小児であれば、

  • 息が吸えるのか
  • 息が吐けないのか

という情報を会話や呼吸の仕方からアセスメントが必要です。

補足説明!

補足事項
呼吸の仕方以外にも、咳の仕方や随伴症状からのアセスメントも重要になります。

小児喘息患者の看護計画

小児喘息患者の看護計画

小児喘息は、呼吸器疾患であるため呼吸が安楽におこなえるよう支援することが前提になります。これから、小児喘息患者へ立てる看護計画について、以下のような具体的な事例をもとに説明します。

【事例】:Bくん4歳

  • 自動車が好き、1歳の妹がいる
  • 喘息発作を起こして夜間救急に来院、そのまま入院
  • 点滴と1日4回の吸入がある
  • 初めての入院で食欲もない状態
  • 不安から看護師を見ると泣いてしまう

Bくん4歳・小児喘息患者の看護計画について

事例となるBくんの看護計画について、看護目標・OP(観察項目)・TP(ケア項目)・EP(教育・指導項目)それぞれ詳しく説明します。

看護目標・環境の変化に慣れることができる
・合併症をおこさず喘息症状を軽減できる
OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・酸素飽和度
・呼吸状態
・呼吸音
・痰の有無
・発作頻度、状態
・水分摂取量
・排泄回数、状態
・末梢冷感の有無
・吸入の仕方
・表情
TP
(ケア項目)
・訪室時は母親と話ながら少しずつBくんと接する
・1日3検は大好きな自動車のおもちゃを使い遊びながら観察し、症状の有無の声かけをする
・検温時にBくんに触れるときは母親と一緒におこなう
・吸入時は吸入器に自動車の絵を描いたシールをBくんと一緒に貼ってから実施する
・Bくんが好きなジュースを1日500mlコップに入れて飲み、飲めたら点滴にシールを貼る
EP
(教育・指導項目)
・吸入はBくんが自分で持てるよう、母親に声かけをしてもらう
・Bくんが症状を訴えられるよう、母親にも看護師と共通の言い方で症状を聞いてもらう
・発作時の対処法を母親に覚えてもらう

今回は、幼児のケースで看護計画を立案しますが、小児の性格や年齢、家族構成などにより特に行動計画については小児喘息患者ごとに全く違うものになります。

小児喘息患者Bくんの看護計画に必要な考え方

事例となる小児喘息患者Bくんの看護計画の中にある、

  • Bくんが入院生活と看護師に慣れること
  • 4歳であるため症状を少しずつ自分で訴えられるよう関わること
  • 今後も継続する可能性のある吸入を自分でできるようにすること

というそれぞれの目的には、兄として自信を持ってもらいたいという意図があります。ただ単に小児喘息患者の症状を改善させるためだけに看護計画を立案しているのではないのです。

予防策を取りながら早期発見できるよう観察することも大切

Bくんの事例では発作と入院の不安から食事が取れていないため、喘息以外にも脱水など他の病気を招く恐れがあります。そのため、予防策を取りながら早期発見できるよう観察することも大切です。

小児喘息患者の家族への看護を忘れないことも重要

Bくんのことはもちろんですが、忘れてはならないのが家族についてです。まだ小さな妹がいるため、

  • Bくんが母親を独り占めしてしまう
  • 母親の負担が大きくなってしまう

といった状況にならないように看護を行うことも重要です。早期にBくんとの信頼関係を築き、看護師と一緒に治療に向き合えるよう関わり方を考えることも必要なのです。

母親の不安に寄り添う看護も看護師の大切な関わり

初めての入院という点ではBくんだけでなく母親も不安です。母親の不安に寄り添う看護も私たち看護師の大切な関わりです。

ポイント!

ポイント
喘息はストレスの影響を受けやすく、入院による環境の変化、親と離れることなどにとても繊細に反応するため、少しでも発作の誘因となるものを減らせるよう関わることも大切です。

小児喘息患者の看護の注意点

小児喘息患者の看護の注意点

小児喘息患者の場合は、ストレスを最小限にし、症状の変化に的確で素早い判断が命を左右することがあるため、意識して看護しなければなりません。他にも対象が小児というだけで、注意しなければならない点はたくさんあります。

小児喘息患者へ正しい指導ができないと発作を繰り返す

例えば活動量が多くなる学童期の小児たちは、自分の活動量と喘息とのバランスがわからず、よく発作を起こしてしまう小児もいます。そのため小児であっても、

  • 発作がどのような症状であるのか
  • 発作が起きたらどうしたらいいのか

など、自分の病気を正しく理解できるように指導することも必要な看護であり、注意するべき点になります。

自分の力を過信して判断が遅くならないように注意

小児喘息は年齢によって症状の現れ方が違うからこそ、広い視点と観察力、アセスメント力が求められます。自分の力を過信せず、早め早めの対応をすることを意識しておきましょう。

看護師が小児喘息患者の看護で求められるスキル

看護師が小児喘息患者の看護で求められるスキル

看護師が小児喘息患者の看護に対して求められるスキルは4つあります。これから必要な4つのスキルについて説明します。

発作の程度を素早く見極めて重症度ごとに適切な処置を行う

喘息発作には小発作・中発作・大発作の3つの程度分類があり、順に重症度も異なります。特に大発作では急変と同じ緊迫した状況に陥りやすく、呼吸困難が進んで意識レベル等の低下も認めるような症状がみられます。素早く状態を見極めて適切な処置能力は必須です。

注意点!

注意点

呼吸困難、パニック、水分摂取不可、チアノーゼの出現、SpO2低下、意識レベル低下などの症状が多く出た場合は、緊急性が高まりますので注意が必要です。

正確な患者の状況を早急に医師に報告し指示を受ける

呼吸症状の悪化が進む場合は、薬剤投与や酸素吸入など対応の早さが患者の生命に大きく関わってきます。看護師は早急に医師への報告と指示受けをし、医師の診療介助、処置介助を行いながら、平行して患者の全身状態を細かくチェックします。

医師の指示通りに正確な薬剤投与を行う技術

呼吸症状に対して投与される薬剤は即効性も絶大ですが、その反面、副作用も大きくリスクもあるため、輸液量や輸液速度を正確に実施しなければ大きな事故に繋がります。看護師は使用される薬剤の効果と副作用の知識を持ち、その知識を含めて患者の看護にあたる必要があります。

患者の家族へも配慮して行動できるスキル

患者の家族は、小児喘息と診断をつけられたショックにはじまり、以下のようなさまざまな不安に苛まれます

  • いつ起こるかわからない発作にどのように対応すれば良いのか
  • 今後小児にどのような生活を送らせていけば良いのか

こうした家族の不安にも看護師はしっかり寄り添い家族が抱えるストレスを理解していくことも重要なスキルです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。息苦しいという訴えがあると喘息を疑いますが、喘息発作に似た症状でも、他の病気である場合があります。小児喘息の知識を持たないと処置や対応が遅れ、重大な事故に繋がりかねません。

さらに、小児喘息は年々、低年齢化しており小児領域においてもその対象は生後数ヶ月の子から、中学生まで大きく、その年齢層にあった身体症状や病態、身体的機能、理解力を考慮しながらの看護が必要になります。

指導も大切な看護業務のひとつとなるこの疾患ですが、小児領域では必ず誰もが受け持つであろう患者であると思いますので、この記事で少しでも参考となれば嬉しいです。

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