医療的ケア教員講習会は「指導看護師」となるための講習会です。
医療改革の一環として、平成24年度から社会福祉士法及び介護福祉士法が改正されたため、介護職員による一部の医療的ケアの実施が認められるようになりました(喀痰吸引・経管栄養)。
(受講資格は正看護師の資格となります。初回の指導、急変時の連携及び実地研修の最後の評価を実施し、評価票へ署名が可能になります。)
医療的ケア教員講習会を経て指導看護師になった場合は、介護職員が安全で正しい知識を学び必要な技術を習得し、医療的ケアを実施できるようサポートしていきます。
また、介護福祉士国家試験の受験要件として医療的ケア科目修了が必須となったため、医療的ケア教員講習会のニーズは高まっていると言えるのではないでしょうか。
ここでは、私が体験した医療的ケア教員講習会について説明していきます。
医療的ケア教員講習会の内容

冒頭でお伝えしたように指導看護師になるためには、医療的ケア教員講習会の参加が必須です。(主催元は地域によって違い、看護協会や都道府県及び市区町村、医療関連会社主催が多いと言えます。)
また、医療的ケア教員講習会の開催頻度は、年に2~3回程度のところが多いですが、医療的ケアのできる介護職員を増員しているため、開催日が増えていることが実情です。
指導看護師になるために必要な日数は1日、又は多くても2日程度で、費用はテキスト代・証明書代等で1万円前後です。
流れとしては、医療的ケア教員講習会は1日完結で、朝から夕方18時くらいまでの講義と講義に沿った修了テストが最後にあります。
私が受講した医療的ケア教員講習会の講義内容と演習内容について以下で説明します。
講義内容について
医療的ケア教員講習会の講義内容は、
- 制度の概要
- 医療的ケアの基礎
- 喀痰吸引
- 経管栄養
以上の4科目、各1時間と以下で説明するシミュレーター使用した演習3時間です。
また、喀痰吸引・経管栄養に関しては改正された法律をベースに介護職員ができる具体的な業務範囲や講義の進め方、教え方のコツを学びました。さらに、医療的ケアは常に危険と隣り合わせであるということや、正しい知識と技術を習得する必要性についての講義を受けました。
演習内容について
医療的ケア教員講習会の演習では、シミュレーター(人形)を使用し、生徒役と講師役に役割分担しながら行いました。
シミュレーターには、吸引と経管栄養の体験ができるものもあり、キーワードと言える医師の指示書は、吸引に関するルール等が個別的に書かれているものでした。
例えば、介護職員の吸引範囲は気管切開部への吸引チューブ挿入が約7センチ内、口腔鼻腔内吸引は10センチ内、吸引時間10秒以内等と書かれています。
講習会を経て、お勧めしたい看護師とは?
看護師が主に働く現場は病院ですが、在宅分野(居宅、施設、教育等)で今後働きたい、もしくは興味がある看護師には、医療的ケア教員講習会への受講をお勧めします。
現在病院勤務だとしても医療社会情勢を反映したものとして知っておくことは重要なため、医療的ケア教員講習会を受け、今後のスキルアップに役立たせることが可能だと言えます。
看護職も介護職も互いにプロフェッショナルであり、各職種の得意分野があります。
在宅や施設分野においては特にその専門性が活かされ、看護師はどちらかというと医療寄り、介護職は生活に密着した関わりが大きいです。
介護職の方は、看護師よりも多くの生活に根差した情報や背景を知っている方も多いです。
互いの得意分野を活かし、協働しながら利用者や患者を支えるという考え方を持つ看護師に良いかと思います。
指導看護師としての活かし方

冒頭で説明したように指導看護師となった場合、
- 喀痰吸引・経管栄養等の医療ケアを担当する介護職員に指導
- 介護職員が受講する実務者研修の授業科目「医療的ケア」の講師
以上のことが可能になります。
医療的ケア教員講習会を経て、指導看護師となった私が活かす方法をご紹介していきます。
求職者支援や職場単位の研修の仕事で活かす方法
医療的ケア教員講習会を経て、指導看護師となった場合は、スクールや専門学校のカリキュラムに沿った講義やハローワークの求職者支援、職場単位での研修等の仕事があります。
求職者支援や職場単位での研修等の仕事に興味がある看護師は、ハローワークや求人誌の講師募集に応募することが近道でしょう。
最近では、派遣会社が窓口になっていることもあり、1度講義を経験すればその後は能力や実績に応じて、声がかかることが多いです。
スクール講師・職場の実地研修の仕事で活かす方法
介護系スクールでの講師や、職場での実地研修を担当すること等も指導看護師の仕事です。
講義では、解剖整理から技術面をテキスト中心に行い、演習ではシミュレーターを使用し手技を習得してもらいます。学習期間はカリキュラムにより、演習評価をして終了となります。
また、実地研修を一手に引き受けている専門会社に、高額・出張有の転職をする等キャリアアッププランを描くことも可能です。
講習会を受けて良かったと感じること

私が医療的ケア教員講習会を受講して良かったと感じたことを説明いたします。
介護職員への伝え方を学べたこと
現在は、看護師が看護師のみへの指導・教育が中心ではなく、チーム医療の一環としてあらゆる職種がお互いの専門分野の知識や技術を享受しあうことが必要です。
介護職員は看護師と比べて医療知識が少ないため、介護職員に指導するときは選ぶ言葉や使う媒体を変えなければ伝わらないことを学びました。
介護の職場では、様々な職種が働いておりベースの知識がバラバラです。ですので、自分の知識や技術を振り返り反芻して、どのような講義が分かりやすく定着するものになるのか常に考えるようになったことが良かったことです。
連携と協働が必要なのだと再認識できたこと
看護師1人で対象者を支えることは不可能です。医師やコメディカルスタッフ、患者利用者ご本人はもちろん、医療福祉に携わる専門職は多様であり、皆と連携と協働が必要なのだと再認識しました。
病院での看護業務だけでなく、在宅分野、教育分野へと仕事の幅が拡大しました。
教えることは自分が理解している以上のものが必要であると分かりました。
最後に
介護職員が医療的ケアを担うことに懐疑的な意見もまだまだありますが、医療福祉の担い手として人手が必要であることが現実です。
そのため、「患者・利用者の生活を支える介護職員に医療的ケアを学んで欲しい」「指導できる看護師も増えて欲しい」とチームワークの観点からも多くの声が挙がっています。
医療的ケア教員講習会を経て指導看護師に興味があっても、指導看護師としての仕事に就くまでには至っていないという看護師もいるでしょう。
いきなり正職員として働くことは難しくても、非常勤講師として医療的ケアに関わるという方法もあります。
医療的ケア教員講習会前には、「できない・分からなかったこと」が指導看護師になることで講義を経て得られる達成感、そして”やりがい”につながります。
指導看護師として働きたい看護師は、是非参考にしてみて下さい。


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